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するとカイは、少しバツが悪そうに答えた。
「…僕が殺したおっかあーーー母に、少し似ていたんだ」
「お母様にーーー…?」
「明るく思いやりがあって、
ちょっとお節介なところもあったけど、
僕や家族のことをいつも気にかけてくれていた。
…でも母は、真面目な人だったから
村の教えを忠実に守り、僕の毒で死んだ」
「…っ」
伊咲は、以前カイが話してくれた母との出来事を思い出し、胸が締め付けられた。
「そして過剰な程の世話焼きだったから、
六花を六花の母親から守ってあげていた。
それは前にも話したと思うけど…。
六花を我が家へ避難させてくる時には、
いつも六花に代わってぶたれていたんだ。
他人のために、自分が傷つかなくても良い痛みまでもらってきていた人だった」
「…そっか…」
伊咲が返す言葉に戸惑っていると、
カイはくすりと笑みを浮かべ彼女を見た。
「ーーー伊咲を見ていると、母を思い出す。
母は、その優しさゆえに不遇な人生を歩んだんだ。
だから伊咲が他人のことで心を痛めたり、他人のためばかりに行動しているのを見ると放っておけないと感じて、
それがいつの間にか恋愛感情に変わっていた気がするよ」
「そうだったんだね…。
カイが私のことを心配してくれていたことや、
私を好きになってくれたことは凄く嬉しい。
ーーーでも…
カイのお母さんは、本当に不遇な人生だったのかな」
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