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「…分かってるんだ。
人生に『もしも』が無いってことくらい。
伊咲と出会う時点を選ぶことはできないし、
一度奪った命を取り戻すことはできない。
ーーーそれでも、僕が別な形でこの世に生まれていたら?
僕に毒を作る以外の生き方を教えてくれる人がその当時いたなら?
そんな過去の『もしも』に囚われ続けている」
「カイ…。
変えられるのは、これから先の未来だよ。
未来は今見えないかもしれないけど、
『もしも』なんて後悔をすることだってないんだから」
すると、カイはおかしそうに笑った。
「はは。伊咲がそれを言うと、なんだか面白いね。
伊咲には、未来を見通す力があるんでしょう?」
「…でも、自分の未来を知ることはできないんだよ。
私にできるのは、未来に起きる世の中の流れを知ることだけ。
けれど私は伝え方を間違ってしまったがために、
取り返しのつかないことをしてしまったから…」
「それこそ、伊咲の問題じゃないのになあ…。
ーーーでも、そんな風に誰かのことで心を痛めることのできる伊咲だからこそ、
僕が持っていないものを持つ伊咲が素敵に見えるんだろうな」
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