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「父上も利世様も、ご自分を責めていらしたのね。
ーーー母上は父上のことが大好きだったわ。
それで色々悩んでいることも、私はなんとなく気付いていた。
…でもねっ!
母上のことをずっと守ってくれている人がそばにいたから、寂しくはなかったと思うの」
「お梅をずっと守っていた人…?」
幸村が不思議そうに尋ねると、お菊はニコッと笑みを見せた。
「うん!甚八!!」
「…ああ、甚八か。
甚八とは昔馴染みで姉弟のように育ったと言っていたからね。
俺も甚八のことは頼りにしている。
彼は母上だけでなく、真田の皆を守る素晴らしい家臣だよ」
「んー、そうじゃなくって…。
甚八は母上が寂しい夜はいつも母上の隣で寝かしつけてあげていたしー…
母上がお空へ旅立つ時も、一緒に出掛けようとしてくれたよ!」
「…え?」
「ーーーだから、母上は寂しくなんてなかったはずよ!
きっと今は、離れた場所で楽しく暮らしているの!」
お菊の話を聞いた幸村は、呆然と口を開けたまま、視線をお梅に移した。
お梅が寂しい夜は寝かしつけ、
空へ旅立つ時も一緒に行こうとした…?
「…お菊。甚八は?」
甚八がまだ息をしていたこともあり
お梅が亡くなった、という報告だけを携えて向かった使者から
幸村は甚八のことを何も聞かされていなかった。
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