真田九勇士

20/34
前へ
/777ページ
次へ
「とにかく。彼女の言うことは信用しよう。 皆もそれでいいね?」 幸村が穏やかな笑みを浮かべ問いかけると、七勇士たちはそれぞれ異なる反応を見せた。 「いいと思いまーす!」 鎌之助は嬉しそうに即答した。 「私もです。 そうと決まれば、汚れてしまった衣服を替えてあげませぬか。 召し物も、六花のものを貸してやってはどうだろうか」 続いて清海がそう言ったが、それに対して六花は嫌そうな表情を浮かべた。 「えっ…。私の衣を? でも彼女、歳も体型も私と違うし… 色や柄の好みも違うんじゃないかなあ」 そう言う彼女はすらっとした細身の、10代後半程度に見える華やかな美少女だったため、 ーーー考え過ぎかもしれないがーーー 自身はそれとは反対だと暗に言われた気がし、伊咲は複雑な思いがした。 「六花、快く貸してあげなよ。 着物なんて帯でいくらでも幅を調整できるし、 好みが違ったらどうだと言うの?」 するとその時、優しい声色の男ーーーカイが六花を嗜めた。 「伊咲さん…でしたか」 「!はい」 「ずっと牢の中に閉じ込められていたあなたを心配していました。 他の皆も同じ気持ちなので、どうか安心してください」 「え?私は別にーーー」と六花が口を開きかけたが、 カイは有無を言わさず彼女の唇を手で塞いで黙らせた。 がーーー 「俺は心配なんかしてねぇよ」 小助はぎろりと伊咲を睨みつけた。
/777ページ

最初のコメントを投稿しよう!

308人が本棚に入れています
本棚に追加