真田九勇士

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「…ちぇっ。はーい!」 六花は小さく舌打ちをして立ち上がった。 「じゃー先に着物貸すから。 甚八は湯あみ場で合流してね」 「はい」 甚八は短く返すと、颯爽と広間を後にした。 「ほらっ、ついて来て」 「は、はい!」 自分よりも歳下に見える六花だが、 心底面倒臭そうな反応を示され、伊咲は困惑していた。 「あのーーー六花さん…?」 「あなたは六花じゃなくて、望月って呼んで」 「あ、すみません! 皆さん下の名前で呼ばれていたもので…。 望月さんと呼べばいいんですね」 「九勇士は身内だから私のことを六花と呼ぶけど、それ以外には望月と呼ばせているの」 六花は、不機嫌そうにため息をついた。 「本当はカイにだけ、六花と呼ばれたかったけど。 カイが私を六花と呼ぶのを真似して 他の九勇士も馴れ馴れしく呼び始めたのよねぇ…」 「カイ?…えっと、さっきあなたの口元を塞いでいた人ですか?」 「そう、海野六郎。 皆はカイって呼んでるけど」
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