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「主君が討たれて行き場を無くしていた鎌之助だけど、
今は幸村様のために誠実に働いているんだよ」
「はい、鎌之助さんも良い人だなって印象を受けました!」
「十蔵はーーー皆のお兄さんって感じかな。
落ち着いてて、余裕があるからね」
「あ…あの品のある男性ですか?」
「うん。元々は真田の領地で生活する農家の出なんだけど、
農作だけでは食べていけなくって、
狩もするためにと身に付けた弓矢の技術が幸村様の目に留まったそうだよ」
「そうなんですか!
てっきり公家や武家の人かと勝手に想像していました…」
「はは、彼もそう思われるように努力しているからね。
彼の出自を知っている小助が彼をなじったりするもんだから
頑張って教養を身につけて、見た目にも品が出るよう気を配っている努力家なんだ」
カイが何人かの紹介を終えると、
伊咲は少し迷った末に尋ねた。
「あの…一人だけ女性の…」
「ああ、六花?」
「はい。彼女はカイと親しいんですよね…?」
すると、カイはその言葉の意味を少し考えた後、口を開いた。
「ーーーそうだね。
彼女は僕の同郷、幼馴染みなんだ」
「えっ、幼馴染み?」
「小さい頃から僕の後をついて回っている、可愛い妹みたいなものだよ」
妹…。
そっか、カイの方は、六花さんのことは妹のように見ているのか…。
「もしかして恋仲に見えた?」
「えっ?!あ、いえ…そんなことは…」
「いいんだ、よく間違えられるから。
僕が女中と話していると六花が飛んでくるから、
屋敷の人達はみんな僕達がそうだと勘違いしているしね」
「あ…なるほど。
ーーーでも、それは良いんですか?
周りに誤解されたままっていうのは」
すると、カイは少し黙った後、ニコッと笑みを浮かべた。
「別に誤解されても、特に支障はなかったからね。今までは」
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