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「えっ…」
今まではーーー
カイの言葉の裏を考えようとした時、
それを遮るかのようにカイが再び話し始めた。
「あとの二人だけど、伊咲さんはまだ会っていないよね」
「あっ…はい。
ご多忙なんでしょうか?」
「うん、二人は幸村様が特に頼りにしている存在だからね。
というか、任務が基本外部に潜入することだから、屋敷にあまりいないと言った方が正確だね」
「外部に潜入…?それがお二人の役割なんですか?」
「そう。変装して敵に近づいたり、嘘の噂を流して情報を撹乱させたり、時には刺客として命を奪ったりーーー
彼ら…猿飛佐助と霧隠才蔵は、それぞれ甲賀の里と伊賀の里から派遣されてきた、いわゆる忍なんだよ」
忍ーーー
その実体は未だ謎が多いとされる存在。
そして猿飛佐助と霧隠才蔵と言えば、
架空の人物としても何度か耳にしたことのある有名な名前だ。
「凄い…そんな人達が、幸村様に仕えているんですね!」
「うん。彼らも含めて、全部で九人が真田九勇士と呼ばれているよ」
「あ、待ってください。
カイのことをまだ聞いてないのですが…」
「僕?」
「はい。あと、六花さんも…役割としては、どういうことをしているんですか?」
「僕と六花は表舞台に立つようなことはしていないよ。
戦場で活躍できるような体力や武力は持ち合わせていないからね。
その代わり、僕達が育った村では特殊な技術を持っていて、
村の者でなければ扱えないような物を作ることができるんだ」
「特殊な技術…?」
「そう。毒とか、爆弾とか、ね」
カイは笑みを浮かべたまま続けた。
「僕達は、市販品よりもずっと強力な爆弾を作る技術を持っているし、
匂いや色で気付かれるようなことのない完璧な毒薬も生み出せる。
その技術は決して村の者以外に伝えてはならないから、
幸村様は僕達の村長に多額の礼金を積んで、
僕達を屋敷に連れて来たんだ」
「なるほど…」
こんな朗らかな笑みを見せる容姿端麗な男の子が、
爆弾や毒を作るなんて想像できない…
伊咲はそう考えた直後、はっとして自分の手元のお茶を覗き込んだ。
「ふふ、安心してよ。
お茶に毒なんか入れてないからさ」
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