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「あっ…」
「僕の紹介をすると、皆はじめは僕に対して疑心暗鬼になるんだ」
「そ、そんな…私は…」
「気にしないで、慣れてるからさ」
カイは変わらず笑みを浮かべていたが、
先程よりも少しだけ寂しそうな表情に見えた。
「だから、この屋敷で僕の点てたお茶を飲んでくれるのは六花くらいだよ。
僕が村長の命で幸村様に召抱えられることが決まった時、
自分もついて行くと言ってくれたし…。
六花は僕にとって、心の支えであることは間違いないよ。
恋仲では、ないけどね」
それを聞いた伊咲は、思わず茶器を手に取り、残っていたお茶を全て飲み干した。
「!伊咲さん…?」
「っ…、私も、カイのことを信用します!」
「はは、それを証明するために飲んでくれたの?」
「はいーーーいえ、このお茶本当に美味しかったんです。
私が今まで飲んできたどのお茶より、一番に!」
伊咲は続けて、隣に置いてある茶菓子を口に入れた。
「美味しい…!
やっぱり甘い物って良いですよね!」
「…伊咲さん…」
「!はいっ?」
「ーーー僕もあなたのこと、伊咲と呼ばせてもらってもいいですか」
カイにじっと見つめられた伊咲は、思わず顔を紅潮させた。
「ど…どうぞ」
「いさーーー」
カイが伊咲の名を呼ぼうとした、その時。
「お待たせしました」
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