真田九勇士

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「ああ、甚八。早かったね」 軍議を終えた甚八が、伊咲を引き取りにやって来た。 「カイ、手間をかけさせてすみません」 …手間? 甚八に自身を手間呼ばわりされたことに伊咲は眉根を寄せたが、 事実自分が厄介な存在であることは間違いないと思い直した。 「いいよ。僕は楽しかったから。 ね、伊咲?」 「あーーーはい!私も楽しかったです!」 「甚八が忙しい時は、こうしてまたお茶でも飲もうね」 「はい、ぜひ!!」 カイの部屋を後にした伊咲は、 久しぶりに沢山人と話したことで気分も晴れ渡り、 少しうきうきした足取りで甚八の後をついて行った。 そんな伊咲の様子を察したのか、甚八が声をかけてきた。 「あなたとカイは気が合いそうですね」 「へ?!…あ、そう…ですね。 お喋りするのは楽しかったです!」 「…カイがはじめから監視役を受けてくれれば良かったのに」 「…でも、カイは引き受けなかったんですよね…?」 「任務が立て込んでいるので、仕方なかったのだと思います」 「あ…毒薬と爆弾作りが仕事なんですもんね。 急いで納品しなければならないものがあったってことですよね?」 「ーーーあのお喋りが…」 甚八は伊咲に聞こえないような声で呟き、小さくため息を溢した。 「他にも何か聞いたのですか」 「えっと、真田九勇士の皆さんについて色々お聞かせ頂きましたよ!」 「…はー…」 「甚八さん?」 「…そうですか」 甚八は再びため息を溢し、伊咲が今朝目覚めた部屋の前まで着くと 彼女を中に入るよう促し、ピシャリと戸を閉めてしまった。 「夕食が運ばれてくるまで、部屋でお待ちください」 「はい…甚八さんは?」 「部屋の外であなたが逃げ出さないよう監視しています」 「それなら、中で待ちませんか? 暗くなって来ましたし、夜に縁側にいるのは寒いんじゃ…」 「俺の心配は不要です」 甚八は素っ気なく言うと、 戸越しにストンと座り込んでしまった。
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