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甚八さんも、嫌々私を監視してるんだろうけどーーー
私だって、こんな冷たく接せられると…
カイがフレンドリーだから尚のこと、甚八さんの冷たさが引き立って堪える…
部屋の中にいてもすることのない伊咲は、
仕方なく布団の中に入り、夕食まで待つことにした。
「お待たせいたしました、夕食をお持ちしました」
しばらくすると部屋の外から女の声がかかり、
伊咲が返事をすると、彼女は中に入って来た。
「あっ、朝にお会いした…!」
「はい、あなた様の食事を運ぶよう仰せつかった、女中の雛と申します」
「雛さんですね。
私は三吉伊咲と言います、よろしくお願いします!」
部屋で退屈を極めていた伊咲は、ダメ元で雛にお願いをしてみることにした。
「あのーーーもし良ければ、一緒に夕食を食べませんか?」
「えっ、しかし…」
「禁止されているということなら、断ってもらって結構なので…!
少しだけでもお話できたら嬉しいなと思って…」
「いえいえ!
ちょっと驚きましたが、そういうことでしたら、ぜひ。
では私の分の食事も厨房から取って参ります!」
雛は伊咲の誘いに応え、いそいそと食事を取りに戻って行った。
「あの、甚八さん」
「何ですか?」
戸の向こう側に座っている甚八に声をかけると、すぐに返事が来た。
「雛さんと部屋で食事するのは、別に問題ないですか?」
「あなたが屋敷の抜け道などを聞き出すのでなければ問題ありません。
女中が抜け道を知っているとは思いませんが」
「あ…そうですか」
伊咲がそう返したところで、食事の盆を持った雛が戻って来た。
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