真田九勇士

33/34
前へ
/777ページ
次へ
「お待たせしました」 「いえ!」 雛と食事を始めた伊咲は、色々質問を投げかけた。 「雛さんはずっとこちらで女中をされているのですか?」 「元は幸村様の奥方様に付いていたのですが、 真田家に輿入れした際に、私も一緒について来て そのまま真田家に仕える女中になったんです」 「そうだったんですね! 幸村様の奥方様…どんな方なんですか? 「誰とでも親しくして下さる、とても人望のある女性なんです。 私たちはお梅様とお呼びしております」 「お梅様…」 「ええ、幸村様にお似合いのお方なんです!」 どうやら雛は世間話が好きな明るい性格らしく、 伊咲の質問に快く、何でも答えてくれた。 「それで、今日真田九勇士の方々とお会いしたんです」 「まあ。皆様個性が強くて面白い方ばかりでしたでしょう?」 「そうですね、話しやすい方も何人かいらしてーーー …そこにいる人とは正反対の…」 伊咲は声を潜め、甚八には聞こえないような声量で言った。 「甚八様は無口なお方ですからね…」 雛も小声で同調したが、伊咲は今朝の雛の様子を忘れてはいなかった。 「あの…、もしかして雛さん、 甚八さんのことが気になったりします?」 「!そ、そんな、畏れ多い…!」 雛はぽっと顔を赤らめ否定したが、すぐに言葉を訂正した。 「…や…、実のところ密かに憧れてはいます。 でも、それは私に限ったことでなく…。 眉目秀麗な甚八様に憧れている女中は他にもいると思います」 「眉目秀麗…。 確かに顔立ちが整っていて、重要な役どころの参謀もしていて、分からなくもないですけど…」 「お察しの通り、必要最低限のことしかお話しなさらないので、女中達は皆玉砕続きです」
/777ページ

最初のコメントを投稿しよう!

308人が本棚に入れています
本棚に追加