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「お待たせしました」
「いえ!」
雛と食事を始めた伊咲は、色々質問を投げかけた。
「雛さんはずっとこちらで女中をされているのですか?」
「元は幸村様の奥方様に付いていたのですが、
真田家に輿入れした際に、私も一緒について来て
そのまま真田家に仕える女中になったんです」
「そうだったんですね!
幸村様の奥方様…どんな方なんですか?
「誰とでも親しくして下さる、とても人望のある女性なんです。
私たちはお梅様とお呼びしております」
「お梅様…」
「ええ、幸村様にお似合いのお方なんです!」
どうやら雛は世間話が好きな明るい性格らしく、
伊咲の質問に快く、何でも答えてくれた。
「それで、今日真田九勇士の方々とお会いしたんです」
「まあ。皆様個性が強くて面白い方ばかりでしたでしょう?」
「そうですね、話しやすい方も何人かいらしてーーー
…そこにいる人とは正反対の…」
伊咲は声を潜め、甚八には聞こえないような声量で言った。
「甚八様は無口なお方ですからね…」
雛も小声で同調したが、伊咲は今朝の雛の様子を忘れてはいなかった。
「あの…、もしかして雛さん、
甚八さんのことが気になったりします?」
「!そ、そんな、畏れ多い…!」
雛はぽっと顔を赤らめ否定したが、すぐに言葉を訂正した。
「…や…、実のところ密かに憧れてはいます。
でも、それは私に限ったことでなく…。
眉目秀麗な甚八様に憧れている女中は他にもいると思います」
「眉目秀麗…。
確かに顔立ちが整っていて、重要な役どころの参謀もしていて、分からなくもないですけど…」
「お察しの通り、必要最低限のことしかお話しなさらないので、女中達は皆玉砕続きです」
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