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第一次上田合戦
翌朝、けたたましい大砲の爆音で目が覚めた伊咲は、何事かと飛び起きた。
「えっ…?!何…」
慌てて戸を開けようとすると、目の前にカイが立っており、あやうく正面衝突をしかけた。
「あっ、カイ!?」
「おはよう伊咲」
「お、おはようございます。
今の音って…?」
「ああ徳川軍が攻めて来たみたい」
「そうーーーええ?!
もうやって来たの?」
タイムスリップして二日目で戦が始まってしまい、伊咲は動転してしまった。
「なっ…なな…、ここにいて大丈夫なの…?」
「うん。徳川の兵は決して中まで侵攻させないよう、幸村様が戦の指揮を取っているから」
「そ…そうですか?」
「あ、甚八は戦場に出たから、終わるまでは戻って来ないよ。
だから、代わりに僕が伊咲の様子を見に来たんだ」
屈託のない笑顔のカイを見た伊咲は、
戦の始まりに固くなっていた心が少しずつほぐれていった。
「そっか…じゃあ、お城の外で
今みんなが戦っているんですね…」
「うん、僕と六花以外はね」
「あれ、そういえば六花さんーーー」
カイが屋敷の女中と話していると飛んでくるんじゃ…?
それともこれは任務だから、気にしていないのかな…?
「六花なら、昨晩徹夜で爆弾を仕上げていたから今は眠っているよ。
徳川の侵攻が思ったより早くて、急いで頭数を揃えるよう言われたからね」
「そうなんですね。
ーーーじゃあカイも、昨日は徹夜で?」
「まあ、ね。
でも気にしないで。一緒に朝食でも食べようよ」
戦が始まり、城の外では大砲の音が聞こえてきているというのに
落ち着いた様子で話すカイが少し不気味に見えた伊咲だったが、
小さい頃から幸村に仕えているという
昨日の雛の話を思い出し、こういったことに慣れているだけなのだと思い直した。
「…なんだか気が引けます」
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