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「予言者ぁ?」
男達はぽかんと口を開けた。
「何の予言者だと言うのだ?」
「ええと…これから先起こる出来事を予言する力を持った人間です!」
「お主、今さっきは『ただの観光客』と申していたが?」
「そ、それは世を忍ぶ仮の姿!
私はこの城の方々に未来をお伝えするべく
観光客の振りをしてここまでやって来たんです!」
よし…この作戦で行こう…
日本史の知識ならば自信がある。
これで少し先に起こる未来を言い当てれば、
貴重な存在として殺されはしないはず…!
「予言者ねぇ…。
ーーーでは、俺が今晩家で出される夕食が何か当ててみろ」
「…そ、そういう細かい予言はできません」
「なんだ、やはり口から出任せではないか!」
「おおお待ち下さいっ!
ここは上田城で間違いないですよね?
季節は…夏真っ盛り、ですよね?」
「当たり前だ。
ここ上田は山々に囲まれた盆地ゆえ夏は猛暑、冬は積雪となるが
我ら真田は屈強な兵士揃い。
甲冑を身につけて今すぐ戦うこととなったとしても、
暑さなどもろともせず、天候には左右されないのだ!」
誇らしげに男が言う最中、伊咲は頭の中にある年表を掘り起こしていた。
天正13年と言えば、第一次上田合戦の年!
今は夏で、丁度8月くらいの暑さに感じるけれど
お城にはまだ敵の徳川軍が攻め入って来た様子はない。
ということは…
「もう少し後に、徳川軍が一斉に攻めて来ます!!」
ーーー伊咲は牢獄に閉じ込められてしまった。
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