真田九勇士

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「そんな!私は徳川の刺客じゃありません! 中立の立場というか、どちらかといえば真田一族頑張れって思ってるくらいで…。 だからこそ敵が攻めてくるから気をつけてと忠告の気持ちを込めて予言したのであって…」 伊咲は辻褄を合わせるため、あくまで真田を思って予言したという体を取ることにした。 「そこに悪意は全くありません! どうか信じてください」 「って言ってるけど、どうする?」 「うーむ…疑わしきは罰せずというのが、幸村様の提言であるゆえ…」 「あ、そうだ!」 鎌之助は伊咲の弁明を聞き、提案を出した。 「他にも何か予言してみて!」 「他に…ですか?」 「そう!それこそ予言者じゃなければ当てられないような内容でね!」 「…そうですね…」 私が徳川軍の刺客じゃないことを証明するために、どんなことを伝えれば信じてもらえるだろう…? 「ーーーえっと、この戦いは真田が勝ちます!」 「うーん、それ、二分の一の確率で当たる予言だよね…?」 「…うっ、確かに…。 じゃあ…徳川軍から上田城に派遣されて来るのは、 鳥居元忠、大久保忠世、平岩親吉といった家臣達で、計約7000の兵数です。 このうち約1300人が戦死すると予言します! 真田側はーーーあんまり聞きたくないかもしれませんがーーー犠牲者は40人程度。 兵力は徳川軍が上ですが、真田軍の作戦勝ちで最小限の犠牲のもとに勝利することを予言します! …これくらい詳しければ、どうでしょう…?」 伊咲がひと息に言い終えると、鎌之助と清海は呆気に取られた表情を浮かべた。 「…確かに、これだけ細かく数字を出されると信憑性が増すねぇ」 「そうだな。一先ず、幸村様に報告してみるか」 「えっ!真田幸村と直接会える立場の方々なんですか?!」 清海の言葉に伊咲はパッと顔を上げた。 「まぁね!俺たちは幸村様の、側近中の側近だからな!」 鎌之助が鼻高々に言うと、伊咲は一転、怪訝な表情を浮かべた。 「…ええと、お二人の名前は会話から察するに、鎌之助さんと清海さんと仰るんですよね?」 そんな名前の側近がいただろうか? 日本史を専門に勉強し、そして教えて来た伊咲は 自身が知る史実の中に聞き覚えのない名前があることに違和感を覚えた。 「ああ、そうだ! 俺が由利鎌之助!こっちは清海って言ってーーー」 「清海入道、だ」 「そうそう、でも長いから皆は清海って呼んでるわけ。 で…、俺たちは幸村様を守る最後の砦! 巷では『真田九勇士』と呼ばれているけどな!」
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