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「ミヨシ?清海と同じじゃん!」
鎌之助は、おおっ!と声を出した。
「確かに、私も三好だな」
「じゃあ遠い親戚の可能性もあるんじゃねえか!?」
「うむ。ミヨシ伊咲よ、出身はどちらだ?」
「えっと…この時代で言うところの…出羽?」
「出羽!!まさしく、私の故郷ではないか!」
「すげえ!出羽国出身のミヨシ仲間だ!」
清海と鎌之助はすっかりハイテンションになり、小躍りを始めそうな勢いだった。
よく分からないけど、偶然が重なって良かった…。
たぶん清海さんのミヨシと私のミヨシは漢字が違う気がするけど…まあ、いいか。
遠い親戚だと思ってもらえた方が、無碍にはされないと思うし…
伊咲は心の中で、ちょっとずるいかもと思いつつ、二人に同調することにした。
「はい、きっと清海さんとは遠い親戚なんだと思います」
「ようし、そうであれば尚のこと、お主の解放を進言せねば」
「うんうん、上田以外の地方から来た女なんて滅多に知り合えないし、
そこから出られたらお近付きにーーー」
「こら、鎌之助!
同じ出羽のよしみとして、それは私が許さぬぞ」
「ちぇ。歳上だからって偉そうによー」
二人は軽口を叩きながら、牢の間を去って行った。
「ーーーはぁ…」
良かった…とりあえず、ここから出られる可能性が生まれたみたい。
日本史を勉強していて本当に助かった!
伊咲はふぅっと長いため息を吐き出した。
それにしても、由利鎌之助に三好清海入道。
史実には聞いたことがないけれど、
記憶の片隅には確かに聞き覚えがなくもない。
真田九勇士ーーーもとい真田十勇士であれば、
確かに江戸時代などの書物にいくつか文献がある。
けれどあくまで架空の存在が活躍する創作物であって、史実にはいないはずなのに…。
やっぱり歴史って面白い!!
現代で生きていたら決して知り得なかった歴史の真実を一つ知れた気分。
そしてこのことは、現代では私以外誰も知らないんだ!
これを発表したら一大スクープになって、
歴史研究家として第二の人生を歩み始められるのかもーーー
…私が現代に戻れたらの話だけど…
伊咲は自分がタイムスリップした身であることを改めて思い出し、
嬉しさと不安とが入り混じった、複雑な思いをため息に吐き出した。
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