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「そういうわけで、例の予言者の話すことはかなり具体的なものでした!
彼女は本物の予言者に違いありません!」
鎌之助が意気揚々と報告を終えると、
その場にいた男達の中からため息が漏れ聞こえて来た。
「鎌之助…。
まだ予言が当たった訳ではないんだぞ」
「小助、お前にダメ出しされると
幸村様に言われている気がしてたまらねぇからやめてくれ」
「仕方ないだろ、俺は幸村様の影武者として真田九勇士を支える一人なのだから」
「ほんと、そっくりすぎて嫌になるわ。
この間も幸村様と間違えて、敬語でお前に話しかけちまったじゃんよ」
小助と呼ばれた男ーーー穴山小助は、
呆れたように鎌之助を睨みつけた。
「鎌之助、もしやその予言者は美女だったのではあるまいな?」
「げ、十蔵!どうしてわかるんだよ?
お前も予言者なのかぁ?!」
「お前がその娘の話をする時、鼻の下が伸びていたゆえ、そう思っただけだ。
どうだ、当たっているか?」
「よく分かったなぁ…凄えや!」
「お前が分かりやすいだけだよ」
十蔵ーーー筧十蔵は、ふっと笑みを浮かべた。
「なあカイ、六花!
お前たちから見ても、俺って
美女に鼻の下を伸ばすような腑抜けた男に見えるのか?」
「その答えは、鎌之助自身が知ってるんじゃないかな?」
「っていうか、腑抜けた男以外にアンタを何て形容したらいいわけ?」
鎌之助の言葉に同時に返したのは、
カイと呼ばれた男ーーー海野六郎、そして六花と呼ばれた女ーーー望月六花である。
カイは20歳位に見える、うら若き美少年。
また六花はというと、海野よりもさらに若く見え、かつ可愛らしい容姿の少女であった。
「鎌之助、そのくらいにしておけ。
折角幸村様が、我ら九勇士を集めての報告の場を設けて下さっているのだぞ?」
清海が嗜めると、鎌之助はムッと唇を尖らせた。
「九勇士じゃなくて、今は六勇士だけどな」
「仕方あるまい。
佐助、才蔵、甚八は多用なのだからな」
「売れっ子は大変だねぇ」
「鎌之助。事情は分かった」
ーーーその時、ずっと黙って話を聞いていた
真田九勇士の主君ーーー真田幸村が口を開いた。
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