第9章 決勝戦

1/1
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

第9章 決勝戦

「ジーーーージーーーーー」 「ミーンミンミンミンミー」 油蝉やミンミン蝉がなく8月、人も球場も乾いた静物の様に銀灰色に焼け水一つない風景の中で真夏の光を容赦なく浴びる。 蝉の鳴き声は野球部選手には誰にも届かない。 今日の気温は34度の猛暑、猛暑日と言っても昨日も猛暑日、その前も、その前も...。 夏の甲子園決勝戦が午後1時と炎天下の中開催される。 既に創立は練習に入っていた故障者ゼロ、コンディションもベスト。 そして試合開始時間が迫ってくる。 球場内は満員御礼!!の4万人以上。 (かつ)てない最強の高校と対戦する。 創立が目標としてた大阪桜蔭に勝った怪物高校。 そして13時私立創立学院高校対早稲山高校の決勝が開始。 試合開始(プレイボール) 創立は後攻だ 「1番ショート山根君」 打者は右打席に入る。 初球 六角から内角低目のストレートを要求される。 「ズギュン」 「カキーン」 三塁線をギリギリフェアになる長打コースだしかし二塁打に抑えた。 六角「馬鹿な相手は前の試合で内角は殆ど打っていなかったこれも俺達に内角が苦手と思い込ませるダミーのプレイをしていたのか?あの大阪桜蔭相手に!」 「2番セカンド谷口君」 初球 六角は外角低目にボールを要求した。 「ズギュン」 「バシッ」 主審「ボール」 六角は抗議したかったこの主審外角に厳しい。 二球目 内角低目にカーブの要求を出した 「ズギュン」 「カキーン」 センターオーバーの二塁打だ 二塁ランナーホームイン 1対0だ 「3番ピッチャー伊藤君」 一球目 六角「この主審外のストライクゾーンが狭いボール一個分中に入れるぞ」 「ズギュン」 「カキーン」 通常の外角低目からやや中に入ったボールはセンターオーバーとなる 二塁ランナーホームインし2対0 以降外角のストライクゾーンの厳しさでバッテリーは一挙6点を失う事になる。 漸くスリーアウトチェンジ ベンチの雰囲気は悪かった1回から6点も取られたのだ。 六角「海斗これ以上点をやる訳にはいかないお前はこの試合勝つのと今後の野球人生どっちが大事だ?」 海斗「聞くまでもねーこの試合に決まってんだろ」 六角「ならばお前の秘密兵器を二つ解禁する1つ目の秘密兵器は2回から3回が限度だが試合が終わるまでそれを続けるんだ体への負担は覚悟しろよ」 海斗「分かった高校野球の歴史に新たなる足跡を付けてやるよ」 宇佐美「丸井例の作戦で先ず1点捕るぞ」 丸井「京都総合戦にやったあれですね宇佐美さん必ず出塁して下さい俺も出るんで」 「一番ショート宇佐美君」 初球 内角高めから落ちるフォーク 宇佐美はバントの構えをしてプッシュバントでショートに転がる打球だ。 ショートは深く守っていた為手前で打球が止まった。 ショートは送球できずセーフとなる。 「2番セカンド丸井君」 丸井はヒッティングの構えをして打席に入る。 この為内野は前進守備をしていない。 宇佐美が大きくリードをとっている。 宇佐美「リーリーリー」 「ズギュン」 「コン」 セーフティバントだ、ショート方面に転がるもショート定位置の為間に合わない。 一塁セーフ。 無死一塁二塁 「3番ピッチャー花道君」 海斗はバットを三回振り打席に入り宇佐美と丸井の作戦は聞いている セカンドにベースカバーが入ってこない為宇佐美は大きくリードをとる。 宇佐美「リーリーリー」 投手の足が上がった瞬間三塁に駆け込む 「ズキュン」 「ボール」 キャッチャーは三塁に投げるもセーフ。 これで作戦の前提条件は整った。 そして二球目... ピッチャーが足を上げた瞬間丸井が走る。 「ズギュン」 「バシッ」 主審「ボール」 キャッチャーが二塁に送球し宇佐美がホーム目掛けて走るも... 「バシッ」 キャッチャーの二塁牽制球をピッチャー伊藤がカット宇佐美はホームと三塁の中間地点。 やられた完全にハメられた、この作戦は読まれていたのだ。 宇佐美は足が速いが挟まれてはどうしようもなくアウト。 丸井は二塁セーフだ。 伊藤「君達の試合は全部見せて貰ってるよその点の取り方も想定の範囲内だよ」 一死二塁となる。 海斗への三球目 「ズギュン」 ボールは外角高目のストレートこれを海斗は流し打ちにした。 ライト深い所に入り3塁打となる。 走者丸井が帰ってきて1対6。 一死三塁 そして4番の六角。 相手の投手伊藤が立ち上がり調子が悪い事は分かっていた。 一球目 「ズギュン」 あわやワイルドピッチとなる高めの暴投を何とかジャンプしてキャッチャーが止めた。 「バシーン」 これに動揺したか次は甘い球が来ると六角は確信した 二球目 「スギュン」 六角の読み通りフォークを高めに置きにきてこれを思い切り叩く。 「カキーン」 その打球はレフトフライになりタッチアップ。 レフトダイレクトで返球するもピッチャー伊藤がカットしバックホームでアウト。 六角「何ぃ何故投手のお前がその場所にいるこの場面でのピッチャーハはホームのバックアップだろ?」 伊藤「確かにそれがセオリーだね、ただセオリー通りにやってたら勝てないんだよ」 六角「送球が()れたら誰もカバーがいないじゃないか」 伊藤「送球が()れる事何てないさだってピッチャーの僕がカットしてホームに投げるんだから確実に球が()れる事はないよ、一応150キロ以上投げれる強肩何でね!」 二死無塁 「五番サード三上君」 初球 「スギュン」 「バシン」 主審「ボール」 二球目 「スギュン」 「バシッ」 主審「ボール」 その後二球続けてボールを出し結果三上はフォアボールとなった。 「6番センター国分寺君」 国分字「いいかぁ俺達は山井以外全員クリーンナップ何だぜそれにセオリー通り野球をやって来た俺は頭に来てんだよ」 初球 「スギュン」 甘く入った高目のカーブをレフト方向に叩きつける。 「カキーン」 大きな放物線を描いてスタンドギリギリにはいる、2ランホームランだ。 スコアは一気に6対3となる。 「7番ファースト本郷君」 初球 「ズギュン」 外角高めのストレートだ 「コン」 伊藤「何!?二死で7番バッターがセーフティーバント有り得ない」 守備はこのイレギュラーな攻撃を全く想定しておらずセーフとなる。 本郷「俺も真似しただけだぜそのセオリー無視した野球って奴をよ」 「8番レフト飯島君」 初球 「ズギュン」 内角高めのストライク。 第二球 「ズギュン」 第二球甘いボールが真ん中に入ってきた 「カキーン」 センターのバックスクリーンに直撃の2ランホームラン 飯島「伊藤選手よー俺達の試合全部見たって言ってたけどせいぜい1番から5番までだろーよ。うち《創立》は9番以外全員クリーンナップ何だぜ!因みに俺は第二の四番て言われてんだよ」 伊藤「クソッ!!クソがーっ!!」 スコアは6対5 これに相手ピッチャー伊藤に火がつきその後のバッターは山井は凡退した。 そして2回取って置きの秘密兵器が解禁となった海斗。 投球練習でフォームを確認する、それは通常よりもトルネード気味のフォームに足を大きく上げ下半身と遠心力をフルに使った投球フォームだ 「ズキューーーン」 球場は沈黙した計測した球速は169キロ 早稲山実業のベンチは驚愕した。 あれはプロでも投げれる球じゃない。 そして第2の秘密兵器もまだ披露していない。 8番「キャッチャー石田君」 そして初球 六角は内角低目の球を要求した。 「ズギューーン」 内角低目のボールは予想していたしかし球種がわかっても打てる球じゃない。 「バシッ」 球速計は173キロを計測していた。 メジャーの記録である最速172キロを上回ったのだ。 これはTV中継でも撮影されている花道海斗の名前は全国に広まった。 海斗は猛暑で汗だらだらそれをアンダーシャツで(ぬぐ)う。 2球目 「ズギューン」 ど真ん中だこれは幾ら早くても打たれる。 しかしバッターのバットは空を切った。 「バシッ」 主審「ストライク」 石田「何なんだ今の球フォーク程落差はない縦に落ちる高速スライダーか?」 これは決勝まで温存しておいたスプリットである、これはストレート同様の握りに近く僅かに挟み込む様にして投げる事により落差はあまりなく本来なら詰まらせて守備でとる海斗が秘密で練習していた球種だ。 そして三球目 「ズギューーーーン」 外角よりボール半個分中に入れたストレートだ。 「バシッ」 「ブンッ」 バッターの石田は見た事のない変化球を見せられ完全にフォームを崩していた。 主審「ストライクバッターアウト」 この回3者連続三振 そしてこの拮抗したゲームは9回まで続いた。 そして9回の表 「7番センター若林君。」 打者は左打席に入る。 六角は内角のスプリットを要求した。 「ズギュン」 それはキャッチャーが立ち上がってジャンプして何とか捕れた大暴投。 六角「タイムをお願いします」 六角「何だ今の球は何処か体に異変があるのか?」 六角「お前だから正直に言うが腕全体が痛いんだ」 六角「疲労骨折か、場合によってはクリーニング手術が必要になってくる可能性もある投手は山井に交代だ」 海斗「いや其処まで酷い怪我じゃない今度失投したら変えてくれて構わない」 六角「お前がそう言うなら試合終了まで黙っておいてやる抑抑(そもそも)重度な怪我ならあんな速度で投げれないハズだ。 そして第2球目内角のスプリット 「スギュン」 今回は要求通りの球だ160キロをゆうに超えている。 「バシン」 主審「1ボール1ストライク」 そして3球目 「ズキュン」 今度は外角のボール球になるつり球だ 「ブン」 「バシッ」 空振りのストライクだ。 そして4球目は 外角高めのストレートを全力投球のサインだ恐らくこれは海斗のピッチングが正常に出来るか試す配球であろう。 「スギュン」 「ブン」 「バシッ」 主審「ストライクバッターアウト」 見事に六角のサイン通りのピッチングを成功させた。 以降のバッターは問題なく2者凡退 そして9回の裏予想外の出来事が。 監督「投手交代してるぞカイリ情報は」 カイリ「エース伊藤君が球数制限を越えました。早稲山実業には控え投手は2名います今投げているのは左腕のオーバースローだから五十嵐選手でしょう」 監督「右バッターの多いうちに左腕をぶつけて来るとは!!で球種は」 カイリ「カーブ、ストレート、フォークです球速は140キロ前後です」 海斗「まぁ代えてくれて良かったぜ泣いても笑っても此処で同点以上にならなきゃ引退も同然だからな」 「3ピッチャー花道君」 海斗は一球目から打ちに行く事を決めていたフォークで勝負されたとなれば此方が不利だ。 一球目 ズギュン 一球目ストライクを取りに来た置きに来たカーブだそれを海斗が見逃すハズは無い。 「カキン」 打球はセンターを超え特大の二塁打となった。 さあキャプテンの仕事だ1年前の全国制覇を口にした今日の様な熱い日を思い出す。 六角「此処で俺に回ってくる。こうなる事は必然だ俺は持っているからな」 三上「俺につなぐ何て考えるんじゃねーぞ六角!!その突き当りはまだ真っ直ぐだぜ!!」 六角「あぁ俺の歩く道に突き当たり何てありゃしねーぜ!!」 西東京か神奈川に優勝旗が渡る事は既に確定済み。 六角は次の三上に回す心算(つもり)はない此処で勝負を決めて試合終了だ。 威風堂々で意気揚々と打席に入る。 極度の集中力で聴衆をわし掴むプレイヤー4番のキャプテン六角。 小さな拍手は(やが)て喝采となり大きな声援が贈られる。 「ゴーゴーレッツゴーカッセ六角 ゴーゴーレッツゴーカッセ六角」 初球 「ズギュン」 高めのフォークから入ってきた六角はこれをカットする。 「カキッ」 待っているのはこれじゃない力と力がぶつかり合うストレートだ。 「カッセカッセカッセカッセ六角」 二球目 「ズキュン」 内角低目に来るボールしかしこれはフォークボールの回転だフォークはワンバウンドし後ろに逸らす。 パスボールで一塁ランナー海斗は二塁に進み余裕でセーフ。 キャッチャー石田がタイムを要求する 主審「タイム」 石田「いいか五十嵐、低めのフォークは無しだ今みたいなパスボールの可能性もある。カーブも持ってかれる危険性があるストレートをコーナーについていくんだ」 五十嵐「ああ分かった」 そしてこの会話の内容は六角に読まれていた六角も同じキャッチャーこの場面で低めのフォークは危険だしカーブも投げさせない要はストレート勝負になると。 三球目 「ズギュン」 外角低目のストレート 「カキン」 六角はカットした。 四球目 内角のストレートこれもカットした。 ファウルが7級続けて続く。 「ズギュン」 そして次の球はストレートのど真ん中。 ベンチは六角に期待も希望も願望も願いもないベンチ一丸になって六角に対する思いは’確信だ’ 何千回、何万回バットを振り続けて来ただろうそれもたったこの一球の為だ。 この瞬間六角は全国制覇を確信した。 応援も最高潮。 「燃えろーーーーーーー六角」 「カキーーーーン」 センタースコアボードを破壊する特大ホームラン推定飛距離150メートル。 大逆転サヨナラ満塁ホームラン。 ただ誰も優勝を喜ぶ体力も気力も残っていなかった。 普通喜びでキャッチャーが投手に抱きつくシーンが多く見られる。 しかし創立は粛々と六角がマウンドに行き海斗と握手をする 六角は泣いていた、海斗も泣いていた。 六角「俺は1年間毎日悩みプレッシャーで逃げ出そうかとも思っただが創立には持っている人間が副数名いるそれを糧に頑張って来れたんだ」 海斗「そのプレッシャーは半端ねー事は知ってるよお前は最高で持ってるキャプテンだったんだ」 山井「海斗ぉぉっ!!!!!」 「バシッッッ!!!!」 海斗は無言で山井とハイタッチ。 非常にクールな優勝の瞬間は後にネットで話題を呼ぶ事となる。 監督「六角を胴上げしてやれ」 そして全員で六角を胴上げする5回程中に舞った。 メンバー全員から目から涙がこぼれるこれは優勝した嬉しさとあと限られた時間しかこのメンバーでしか野球が出来ない寂しさからだった。 表彰式 六角が優勝旗を手にするそれは予想以上の重たさだった。 そして副キャプテンである山井が優勝盾を授与されるこれも予想以上の重みだ、 そして各メンバーにメダルを授与される。 表彰式を終え選手達は甲子園の砂をかき集める。 別に負けた高校だけが甲子園の砂を持って帰る訳ではない優勝した高校も持って帰ってるのだ。 TVには映らないが。 神奈川に戻る創立野球部学校には創立学院優勝おめでとうの横断幕が目に入る。 監督「皆お疲れ様皆が目標に掲げた全国制覇を見事実行した。俺からお前達に捧げる言葉はこの一言だ本当におめでとう」 六角「全国制覇を達成出来たのもナインは勿論スタンドから声援をあげてくれたメンバー一人一人のお陰だ誰一人欠けていたらこれは実現出来なかっただろう俺には感謝の言葉しかない」 六角「俺達の次の目標は国体で優勝する事だ、そうだろう皆?」 一同「オー」 六角「それが終わるまで引退なんてしてらんねーからな」 そして六角は海斗の元に向かう。 病院だ外科に海斗と六角は来ていた。 診断した結果内部的な事ではなく只の筋肉痛である事が判明した。 六角「海斗よー心配かけるなよなー筋肉痛になる位練習サボってた訳じゃないだろう」 海斗「あーわりぃ俺も決勝でテンパってたからよー」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!