第2章 死闘の果てに

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この判定を理解はしたが納得のいかない東空大の選手達はろくに礼もせず引き上げてしまった。 海斗「すげー作戦だったなカイリ」 丹波「相手の敗因は二つだ先ず①インフィールドフライを捕ったショートがサードに投げランナーを牽制しなかった事②審判のタイムの許可を確認しなかったキャッチャーのミスだな、①の場合普通内野フライでタッチアップ何てしないからショートがサードにボールを投げる何て事はしないだろう彼等には運が無かった」 小倉監督「しかし作戦通り彼処(あそこ)でタイムをかけてくるとは強豪校の特徴を逆手にとった作戦だったな。カイリが東空大のタイムのタイミングを熟知していたお陰だそれに今回は外野フライになっても1点取って勝ってたという2重の作戦だ諸葛孔明もビックリな作戦だ」 カイリ「同点の延長戦で且つ1アウト満塁となれば彼処(あそこ)でタイムをかけるのが定石だからね」 監督「しかしカイリ自分の元居た高校だ複雑な心境だろう胸が痛いだろう監督としては申し訳ないと思っているよ」 カイリ「確かに元仲間で今でも仲間だと思っています。でも僕はこの私立創立学院高校の皆も大好きですこのメンバーで甲子園に行きたいと心から思ってますよ」 そして決勝戦私立創立学院高校VS浜横高校の対戦が決定した。 予想通り準決勝は王者浜横高校が勝利したのだ。 そして決勝戦は前日同様の浜横スタジアム。                                    球場前にてエースである海斗は早く来て3年生一人一人に感謝の挨拶をしていた。             海斗は日頃からベンチ入り選手、ベンチにも入れないスタンドで応援する3年生達をリスペクトしているのだ。 そして最後にカイリがやって来た。 監督「カイリ今日も暑くなる作るスポドリ《スポーツドリンク》の量を昨日より増やしてくれ」 カイリ「了解です」 今回は先行だ。 気温は36度の猛暑、どんなに熱くても試合は中止にはならない。 試合開始「プレイボール」 「ウーーーーーーーー」 けたたましい試合開始のサイレン音が鳴り響く炎天下で時間はまだ午前11時だ。 試合は始まったがこの試合は海斗が先発、相手もドラフト候補の2年生エース白川が先発で投手戦となりスコアボードは0が並びあっという間に延長14回まできていた。 海斗は浜横高校が点が入った時に歌われる第2応援歌を毛嫌いしている、絶対に点を与えてあの応援歌を歌わせない意気込みでのピッチングで此処まで抑えた。 バッターから見るとぶつかるんじゃないかと思うボールは外に逃げていく高速スライダー。 三振は2桁までいったが此方も相手の高速スライダーが打てない。 此方(こちら)の主力の丹波と横浦と六角が完全に押さえられている、予想外の相手のピッチャーのよさは流石ドラフト有力候補といった感じだ。 高校野球はピッチャーが全てというが正にその通りの試合展開となっていた。 理由としては良いバッターが中々プロ以外では育てるのが難しいからだ。 そして次の回で決着が付かない場合は翌日引き分け再試合となる。 全力投球してきた海斗にはそんなスタミナは残っていない。 此処(ここ)で海斗が四球を出し盗塁もされ送りバントで1アウトランナー三塁。 史上最大のピンチだ。 海斗自慢の高速スライダーも球威が落ち外野フライでも一点入ってしまうこの状況。 1点でも取られるとサヨナラ負けで3年生は引退に追い込まれるの状況、どうする。 キャッチャーの六角がタイムをとりマウンドへ行く、これは相手のテンポを崩すにも効果的なタイムだ。 六角「2アウトまでに外野にフライが上がったら終わりだ、そしてスクイズもある。幸運な事にお前は右投手だサードランナーの動きが嫌でも見える、走ったら兎に角全力で外せ俺が絶対どんなボールでも捕って見せる。そしてスクイズでなければ俺のサイン通り投げろそうすれば必ず内野ゴロか空振りにしてやる。お前が信じるお前でもないお前が信じる俺を信じろ」 海斗「ああ、お前を信じるぞランナーが走ったらストレートを全快で外角高めに外す必ず捕ってくれ」 内野は前進守備に入る。 右足をピッチャープレートに乗せ正面の3塁ランナーを見る。 このシチェーションで六角は敢えて牽制球のサインは出さなかった。 それはランナーを誘う為だ、決して走られる事に恐怖などしていない、(わざ)と走らせてボールを確実に外せば飛び出したランナーを挟んで確実に3塁ランナーを殺せる。 状況が1アウト三塁から2アウトランナー無しと安全圏に入れるのだ。 海斗が左足を上げると3塁ランナーが走る。 予想通りスクイズ確定だ。 今まで数々の修羅場を越えて来た延長戦を試合終了直前まで抑えてきた。 失投はしてきたが失敗はない。 エラーした日もあったが試合には勝った。 大丈夫だ今回も必ず成功する。 第六感所か感覚二十ある全てをつぎ込み。 電光石火で目下赤道直下の勢いで馬力を最大にキープ。 球場内で蝶が羽ばたいているのが見えたバタフライ効果でアメリカテキサスでハリケーンが起こるかもしれない 海斗の左足が地面につき肘が前方に押し出される。 人の数より若干少なく用意されている希望。 辞しても自転していく地球。 次に前腕が押し出される瞬間のコントロールで全てが決まる。 幸と出るか不幸とでるか此処は押すべきか引くべきか 声が聞こえた’全部やって確かめりゃいいだろう’ ボールを外角高め一杯に外した、確実に外した。 しかし外しが甘かった。 海斗の体感は一億分の一秒をコマ割で進んで行く程体感速度が長く感じられた。 それ以前にマスクを被っていてもキャッチャー六角の絶望的な表情が見えた。 バッターが必死にバントで外した球に食らい付く。 「コン」 六角は一瞬でマスクを外すもボールは海斗の前に落ち捕球する前にランナーホームイン。 浜横高校から地響きの様な第二応援歌が流れる。 海斗は失敗した。 甲子園に皆を連れて行けない。 試合終了(ゲームセット)。 海斗は泣き崩れた、立ち上がれない。 甲子園に出場出来ない悔しさと二度とこのメンバーで試合を出来ない寂しさから海斗の涙は構成されている ベンチの横浦と丹波が引きずって最後の整列に海斗を連れて行った。 悔しさと申し訳なさで涙の止まらない海斗。 海斗「横浦さん丹波さん俺のミスで甲子園行けなくてすいませんでした俺がうまくやっていれば二人が甲子園で活躍してドラフトも良い結果が出せたのに俺の所為(せい)で...俺の所為(せい)で」 其処にカイリがとった行動は 「バチーーーーーーーーーン!!!!!!」 カイリの筋力で中を舞う平手ビンタこれがまたBetter。 海斗は決して大袈裟ではなく吹っ飛んだ、頭を打ち流血した。 カイリ「横浦さんと丹波さんだけじゃないんだよ!他にも三年生はいるだろう?ベンチにも入れない三年生だって沢山いるんだよ(もっと)野球部全員の事も考えたらどうなんだい?」 丹波「カイリ!海斗は今日も朝早く来て三年全員に挨拶してたんだぞ。俺達三年生を一番気にしてたのは海斗何だよカイリはまだ来て日が浅いから分からないだろうが春も夏も秋も冬も海斗は俺達を立ててくれたんだ」 横浦「そーだぜ最後の夏ベンチにも入れずスタンドから応援する3年生に申し訳なさそうに海斗はベストプレーしてきたんだ。俺達を絶対甲子園に連れて行くって必死になってな。負けたのは海斗の所為(せい)じゃねー敗因は俺達が打てなかった事位お前なら分かるだろう」 丹波と横浦は泣きながらそう言った。 山井「あの馬鹿は至って駄目になっていくこんな世界でも気絶しそうな位創立野球部を愛してんだよ!」 山井は泣きながらそう言った。 宇佐美「流石に今の一撃は不味いっすよ海斗さん流血してるよ」 カイリ「見てなかったよ...僕皆の事しか見てなくて...海斗の事良く知ってる心算(つもり)で海斗を見てなかった...ご..免なさい」 普段無表情のカイリは超絶に絶望に満ち溢れた表情を浮かべてた。 カイリ「海斗の言う事なら何でも聞くからゆ..許してくれないかい?」 海斗は流血しながらも笑顔でこう言った。 海斗「良いんだぜカイリお前がいてくれたから前の試合勝てたんだしな何でも言う事聞く?」 頭を打ち流血した海斗は何とか起き上がる。 海斗の顔は泣き顔から笑顔に変わっていたそしてノリも何時もの海斗に戻っていた。 カイリは泣きながら頷いた。 海斗はカイリの為に泣き崩れたい自分を殺し何時もの様に振舞ったのだ。 海斗「許すとか許さないの問題じゃねーよ3年生の為にも絶対甲子園行くんだ今日からすぐ練習に入るからな」 この台詞には力が入っていなかった。 そして数日後の野球部グランドにて。 海斗「ようカイリ約束忘れちゃいねーよな」 カイリ「あの何でも言う事聞くってやつだよね?本当に御免なさい」 海斗「そーだ!だけど嫌なら断ってくれて構わない」 カイリ「何?」 海斗「俺の彼女になって欲しい」 カイリ「えっ?それは正気の沙汰じゃない発言だね!僕は見てくれは女子女子してるけどツンしかないデレもない君を引っ叩いて流血させた最低な女だよ。ついでにアホ毛も生えてくるから切ってるのさ」 海斗はサラッと聞いた。 海斗「それって断ってるの?」 カイリ「僕なんかで良いのかって事だよ?」 海斗「十分過ぎるがお前は俺に興味あるのか?」 カイリ「僕は逢いに着たんだ僕は君に逢いに創立学院高校に転校して来たんだよ!」 海斗「俺はお前の気持ちを知らなかった言ってくれなかったから」 海斗「じゃあ俺は待ってたんだなお前が来るのを。ん!?なんだこの感じ!?聞いたことある様な無い様な台詞」 それは冒頭で見た夢の話である。 カイリ「しかし僕の性格も含めて好きだ何て変わり者だよ」 海斗「俺はカイリのその手に惚れたんだ一生懸命練習してきた汚い手にな、でも凄く美しい手なんだよ」 カイリ「海斗の事は好きだけど野球は別だからね地獄の練習メニューをこなして貰うよ、正直殺しちゃうかもしれないでも私カイリと野球を天秤に掛けたら迷わず海斗をとるよ」 海斗「カイリにそんな事を言われて俺は嬉しいよ何が何でも頑張る」 そして3年生は引退し海斗達が率いる新チームが走り出す。
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