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【MICO 2】
タマのおかげでヨージのスケジュールはわかったけど、全部って。ほぼ毎日学校の8月?夏休みないじゃない。まあ、高三の夏休みが欲しいなんて、今の日本では無理な話だけど。
夏休みが終わったらすぐに進路最終決定の模試。それが終わったら文化祭。そして推薦入試。あっという間に時間が経って行く。
「ミコ、どうするん?ヨージのアホ、全部取るって。小学生みたいに学校来なあかんやん。お弁当持って」
「食堂は?」
「夏休みはおばちゃんらも夏休みやん」
タマは当然というように言う。
ということはお弁当持参で勉強・・・はぁ~。
音大に行きたいと思ってる。でも私立だし、無償奨学金をもらえるほど賢くはないし、ピアノもうまくない。そもそもピアノ科に行きたかったわけじゃない。本当は声楽がしたかった。
でもそれは親に反対された。声楽で食べてなんかいけないって。確かにそんなに上手くはない、好きだから学んでみたいだけ。結局父に言われた一言で進路希望を出していた。
「ピアノにしとけ。ほんだら仕事なくてもピアノ教室とかできるやろ、家で」
音楽家にならないなら、音大を出ても就職口は多くない。教職をとって音楽の先生になれたら御の字だ。それはわかっている。でも普通の大学で何を学べばいいのかわからない。
大学で学んだことを、就職に活かせるのは理系の一握りな気がする。女子大とか行って趣味で声楽やるって選択肢もあるって、5月の進路面談で言われた。正直、まだ迷っている。
夏期講習で勉強しながら考えてみようかな。私立女子大ならなんとかなりそうな気がする。そんな成績悪かったわけじゃないし。
坂の上にある私たちの高校は、地元では進学校と言われている公立高校。国立大にも毎年何人かが合格している。私たちの代では、ヨージと数人が固いと言われている。
ヨージ以外はガリ勉組。ヨージはずっと音楽を続けている。
三年のGW明けに部活組は引退した。でもサークルには無理やりな引退のルールはない。軽音サークルのヨージは、ずっとギターを弾いている。ヨーイチは同じバンドでベース。ドラムとボーカルは受験のために辞めた。
二人が去ったとき、ヨージは『あたりまえ』と言った。
「受験やねんからな。俺は音楽で食っていくから。一日でも弾かへんかったら指が鈍る。エレギは家でアンプ繋がれへんから、ちょうどええねん。学校でストレス発散して家帰ってお勉強や。親も安心しとるしな」
なんだかしらけた風な言い方もヨージらしかった。でも、家でもギター触ってると思う、アンプに繋がずに。
「音楽で食べて行くって決めてるのに、なんで国立理系に行くの?」
前にヨージに聞いたことがある、タマが。私の代わりに。
「文句、言えんやろ、親父」
ヨージはニヤッと笑った。有言実行、ヨージにはそんな言葉が似合う気がする。そんなところも好きなんだと思う。
「ヨージさあ、ミコのこと好きなんちゃうかなあ。告白してみたら?バレンタインとかに」
今年のバレンタインデー前にタマに言われた。チョコは買ったけど、ヨーイチがいたから「二人に」って渡した。
ヨーイチは本当にいつもヨージと一緒にいるから。
声にだしては言わないけど、ジャマ。
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