2 柊の葛藤

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「好きです」  堪らず、胸に燻っている想いを柊は吐露した。  いつから、兄弟だけでは満足しなかったのだろう。  理性で愛してはいけないと思っておきながら、行動は『愛』そのものを示していて。  悠衣もそれを享受していて、だからこれで良いのだと思っていた。  でも……この距離感も、きっと発情期が終わる頃には変わっている。  柊から悠衣は離れ、将来の為に、柊ではない人を番に選ぶ。  そんな時には、それを側で見なくてはいけない兄弟という関係に、嫌気がさすのだろう。  けれどそれは必ず訪れる未来、そして柊も、いい加減この気持ちと向き合い、整理しなくてはいけない。  だから――。 「すみません」  これが最後。  最後の、兄弟を超えた行為だから。 「愛していますよ、悠衣」  その言葉と共に、柊はその唇に自身の唇を落とした。  触れ合わせるだけ、濃厚なキスではなく、想いを伝えるだけの、軽い触れ合い。  けれども長く、名残惜しそうに長く長く触れ合わせていた柊は、寂しそうに瞳を開け、立ち上がった。  これからは傍目に見ても普通の兄弟として見られるように、この育った感情とも、忘れるなんて出来ないから、せめて上手く付き合えるように。 「さようなら」  自分の感情に向けた言葉、悠衣に背中を向けた柊の手を、ふいに悠衣は掴んだ。 「自己完結、しないでよ」  起きたばかりのトロンとした瞳を覗かせて、悠衣は起き上がった。 『さよなら』の言葉から、良からぬことを柊が考えていると思ったのだろう。  その瞳は、不安に揺れていた。
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