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彼との恋人生活は楽しかった。
彼はオシャレなカフェや、絶景スポットを教えてくれた。
デートらしいことといえば、カラオケに行ってマイクに拾われない彼の歌を聴いたり、二人で水族館に行ったりした。
こんなに楽しいの本当に久々かもしれない。
1週間じゃ足りないな。
終わるまで、あと2日か。
今日は臨海公園に来ていた。
フラワーガーデンに行ったり展望台を見た後、私たちは大きな船を見ながら公園内を歩いていた。
「ねぇミナト、記憶は何か戻った?」
「うーん、この街で育ったとかはわかるんですよ。でも、家とか、自分のことはわからなくて」
「そっか…」
「でも、今凄い楽しいから、なんかもう記憶とかいいかなーって思っちゃったり」
「…」
そんなのダメだよ。私も同じ気持ち。
今の彼にどちらの言葉を言うべきなんだろうか。
「あ、大丈夫ですよ!ちゃんとマキさんとの約束は守ります!1週間だけで、いいですから」
「ちがっ」
私の携帯が鳴った。
「ちょっとごめん」
私は焦っていて誰からの電話か見るのを忘れていた。
「…マキ?良かった、繋がった」
「なんで?」
「待って、切らないで。式のことは本当にごめん。前に会社で大きなプロジェクトがあるって話したの覚えてる?実は別れる少し前に、部下がミスしてプロジェクト失敗になったんだ。俺、ついかばっちゃって、下請けに飛ばされて、マキを結婚して支えていく自信もなくて…別れようって言ったんだ」
「………」
「ごめん。でも、部下が自分のミスだって上にかけあって、なんとか本社に戻れた。振り回してごめん。なあもう一度だけチャンスをくれないか?僕と結婚してほしい」
「マキさん、切って」
私は…。
「マキさん」
ミナトに抱きしめられた。
「ごめん」
私はそう言って電話を切った。
「ごめんなさい。でも、どうか、明日までは、僕の彼女でいて」
私は何度も頷いた。
私はミナトのことが好きだ。
気づかないふりをしていた。好きになれば必ず悲しいことになるって知っていたから。
好きになってはダメだって思ってた。でも…。
「好きだよ、ミナト」
明日までじゃなくていい、成仏なんかしなくていい。ずっと私と一緒にいて欲しい。
私はミナトにキスをした。
目を開けると、ミナトは消えていた。
「なんで?なんで今?…嘘つき、明日までって言ったくせに」
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