透明感溢れる青年よ、さようなら

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私は次の日もずっと泣いていた。 傷心旅行のはずが、もっと傷つくことになるとは…。 また傷心旅行に行こうかとも思った。でも新しい人と会うのも、忘れるのも違う。 私はミナトを忘れることは出来ない。まだ彼のことを何も知らないから。 私はこの街に、彼の育った街に住むことにした。 仕事を見つけ平日は働き、休みの日はミナトの教えてくれたお店や場所に行った。 せめて彼の名前だけでも知りたいと思い、最近死んだ人を調べたが、わからなかった。 写真も撮ったけど、私しか写ってない。 「せめて心霊写真にでもなってたらな。会いたいよ、ミナト…」 私はまた写真を見て泣いていた。 ミナトが消えてちょうど1年経った日、私はあの臨海公園に来ていた。 忘れたくないけど、ミナトと過ごしたのは6日だけ。 私の中からミナトが消えていくのが怖い。 「ミナト…」 「マキさん」 ついに幻覚まで聞こえてきた。 「マキさん」 いや戻ってきたのかもしれない。本当は成仏なんてしてなかったんだ。 私は覚悟を決めて振り向いた。 「やっぱり、マキさんだ」 1年前と変わらない子犬のように笑ったミナトがそこにいた。 いや、違う。変わったところがある。 「どうして?」 「んー、なんか死んでなかったみたい」 ミナトに足がある。浮いてない。触れる。 ミナトは泣いてる私を見て笑っていた。 「ねぇ、お姉さん。1週間だけ僕の彼女になってくれませんか?」 私は泣いていた自分を落ち着かせた。 「1週間だけでいいんですか?」 「やだ。ずっと一緒がいい」 ミナトは私を抱きしめた。 「私も」 またミナトが消えちゃうんじゃないかって怖かったけど、今回のミナトはキスしても消えなかった。 私たちはしばらく抱き合っていた。 「ねぇ、今までどこにいたの?」 「マキさんがキスしてくれたとき、目開けたら病院にいて、母さんと父さんがずっと泣いてた。なんかあんまり覚えてないんだけど、事故に合ったらしくて、それ以来目を覚まさないで病院でずっと寝てたらしい」 「だから死んだ人とか調べても出てこなかったのか」 ミナトは私を強く抱きしめた。 「僕がいなくなったあとも探してくれてたんだ」 「うん、少しでもミナトのこと知りたくて」 「僕、目覚めた後すぐにマキさん探しに行かないと帰っちゃうって思ったんだけど、体動かないし声も出ないしで…あーこれマキさん結婚しちゃったかなーって思ってた」 「断ったよ結婚。独身で生きてく覚悟決めてた」 「良かった。リハビリ頑張って、結婚してたら略奪しようと思ってた。今日、もしかしたらここに来てくれないかなって思って外出許可貰って…そしたらマキさんに会えた」 「ありがとう、忘れないでくれて」 「忘れないよ、だってまだ伝えてないもん」 「なに?」 ミナトは私をじっと見つめた。 「好きだよ、マキさん。ずっと一緒にいて。幽霊になってもずっと。幸せにするから、僕と結婚してください」 「はい」 また涙が出てきた。 「ねぇ、ミナトの本当の名前って何?ポチ?」 「ポチじゃないよ!僕の本当の名前は………」
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