待ち人来たりて、されども

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 もう目の前にはあなたの笑顔がある。  とても懐かしくて、とても優しくて。  とても悲しい笑顔。  手を伸ばせばすぐ触れられる距離にあるのに、私の手は自分の涙を抑えるので精一杯だった。  あふれて、あふれて、とまらない。  そのまま、この下を流れる川の水になってしまいそうだ。  もう、全然止まらない。  諦めて、彼を見つめる。  優しくて、寂しそうな笑顔をこちらに向けたままで。  
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