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自転車ならまだ間に合う距離だけど、徒歩で行くと時間かかるけどここは仕方ない。
次のバスを待って遅刻するよりか、努力して学校に行ったという自分の満足感を優先しよう。
「明莉?」
そう思って歩き出してた私に後ろから声がかかる。
振り返るよりも先にその声の主が、私の隣にやって来た。
風になびかれて少しだけ癖毛になっている光希が、自転車を止めて私を見つめていた。
「お、おはよう……!」
「おはよう。もしかして、俺と同じく寝坊?」
私のことなどお見通しだと言うように、笑ってそう言ってくる光希にこくんと一つ頷く。
「うん……バス止まってくれなかった」
「じゃあ、俺が運転手になってあげる。乗って」
そう言って、私の担いでいた鞄を光希の自転車のカゴの中に入れた。
光希の鞄もあるから、カゴは少しきつそうだ。
「いいの?」
「誰かに見つからないように、裏道で行くけどね」
さあ、行くよ!と促されて慌てて光希の自転車の後ろに跨った。
距離が近いこの状況に少しだけ、ドキドキする気持ちを抑えながら光希は自転車を漕いで学校へと向かった。
風を切りながら大通りを避けて、学校の裏側へと続く細い道を走った。
爽やかに吹き抜けていく風が、スカートを踊らせる。
久々の二人乗りに緊張しているのか何なのか、さっきからドキドキが止まらない。
そんな私を他所に、光希はどこか楽しそうだ。
住宅街を抜けて、雑木林の横を通って……知ってる街の道なのに、なんだかキラキラして見える。
そんな中で、学校が見えてきて私は光希の背中にそっと触れた。
「光希!先生に見つかったらまずいからここで降りるよ」
「ダメ、遅刻は許しません」
「でも!」
「大丈夫!こっち側は、先生見回ることほぼないから!」
自信満々にそう答えて、光希は一気に漕ぐスピードを上げて自転車小屋へと一直線に走る。
自転車小屋の段差を乗り上げて、身体が揺れると頭が光希の背中に当たった。
「あ、ごめん。大丈夫?」
「へ、平気!大丈夫!」
自転車のスピードを落として降りれる状態を作ってくれた光希にありがとうと言いながら、自転車から降りる。
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