言えないから秘密なんでしょ

10/11
491人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
私の性癖とも呼べるこの行為は物心ついた頃には既にそうなっていた。 最初はうちのお父さんに。 事務職のお父さんはどちらかと言えばインドア派であまり力仕事なんかも得意じゃない。 だからちょっと男の人にしては華奢な手をしていた。 だけど掌自体は大きくて手首だけがキュッと細くなっている。 そのキュッてなってる手首を見ると子供ながらに堪らない気持ちになった。 そして小学六年の時にお父さんの手首に初めて噛みついた。 めちゃくちゃ怒られたけど止めれなかった。 その内、お父さんが諦めて自ら手首を出してくれる様になった。 お母さんは完全に呆れてたけどね。 中学に入ると何かお父さんにそういう事するのが恥ずかしくなってターゲットを二歳下の弟に変えた。 当時、小学生だった弟の手首に若干物足りなさを感じながらも、それなりに私を満足させていた。 けれど弟が中二になった頃、泣きながら姉ちゃん止めてくれよと言ってきたのを最後に噛まなくなった。 私は毎日悶々とするしかなかった。 高二になって初めて彼氏が出来た。 結構、モテるほうなので告白は常にされていた。 正直、相手の顔や性格なんてどうでも良かった。 満足のいく手首を満足するまで噛ませてもらえれば… 付き合って三ヶ月が過ぎた時 「お前、イカれてる。」 って捨て台詞を吐かれフラれてしまった。 当然か。 それでも幸いだったのは、相手が情け深い人物だったようで、私の噛みつき癖が学校中に広まる事はなかった。 大学に行ってからも同じ。 いくらでも付き合って欲しいと言われるものの理想の手首に中々出会わない。 出会っても私の困った癖を知ると大概、自然消滅か即効フラれるか、気付けば着拒否だ。 こんな恋愛事情なので私はこの年まで未経験と言う厄介なお荷物まで背負い込んでいる。 処女の噛みつき女… 私が男なら絶対、遠慮する。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!