俺にだって秘密はある

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驚いた。 荒川にそんな趣味があったなんて。 手首フェチとはな。 しかも噛みつきたくなるって… どうよ。 さっきは大丈夫って言ったけど本当はかなり痛かった。 人は見掛けによらないもんだな。 だけど俺の手首はそんなにもいいのか? 今ひとつ、ピンとこないんだけど。 沢山の手首を見てきた荒川が言うんだからそうなんだろ? それに荒川って男いないのか? この時から俺はじわじわと有らぬ考えが頭の中を過っていた。 「なあ、荒川。」 「なに?」 太ると嫌だからとか言ってた割には、旨そうに目の前のケーキをどんどん口に頬張る荒川。 「ちょっと提案。」 「どんな?」 その間も食べる手を止めない荒川。 おいおい、俺の分置いておけって。 気を取り直して、 「俺こういう甘いものとかすごい好きなんだよ。」 「そう言えば、さっきもスイートポテト食べてたっけ?」 たいして俺の話には興味もなさげにひたすらケーキを食べ続ける荒川。 マジで全部一人で食べるなよ。 「そっ。俺スイーツの食べ歩きが趣味だから。」 「へぇ…そうなんだ。」 お前、いつもの職場での愛想笑いはどうした?折れそうになる心を奮い立たせて言う。 「っで、荒川さえ良ければ一緒に回ってもらえないかな?もちろんタダでとは言わない。見返りはこれ。」 と言って、ついさっき噛まれた手首を見せる。 一瞬で荒川の顔が変わった。
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