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「おはようございます。」
いつもの様に笑顔を振り撒きながら女子ロッカールームに入る。
うっ
くさっ
朝の女子ロッカールームは異様な臭いが立ち込める。
それぞれ個々に思い思いの香りをつけていて、
それは美容部員の香水の匂いだったり…
洗い立ての髪のシャンプーの香りだったり…
制汗スプレーの匂いだったり…
はたまた女性特有の雌の匂いだったり…
これが閉店後になると一日履いたパンプスの消臭スプレーの匂いまで加わるのだ。
敏感鼻の人は生死に関わるかもしれないな。
とか考えながら制服に着替える。
と同時に気持ちも仕事仕様に切り替わる。
「おはよ~美波。」
と声を掛けてきたのは同期の京子、佐藤京子。短大卒で入社しているので私より二つ年下の同期だ。
ちなみに美波は私の事ね。
私の名前は荒川美波。
美しい波の様に優雅で綺麗な女性に育って欲しいってお父さんがつけたの。
おはよって返すと京子が
「美波、昨日のあれ、どういう事よ~」
と肘でつついてくる。
「昨日?」
「もうっ!とぼけちゃって。見たわよ、安達くんと。」
「見た?」
ヤバい、やっぱり見られたか。
そりゃそうだよね?あんな場所で噛みついたんだもん。
「 あのね、違うの…」
って言おうとしたら
「安達くんに肩を抱かれて消えたでしょ?ちゃんと見てたんだからぁ~」
見たって、その事?
「あは、見られてた?照れるな。」
取り敢えず、話を合わせ様子を見る。
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