言えないから秘密なんでしょ

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「荒川ちゃん、聞いてっ!私やっぱり子供って本当に大っキライ。」 と叫びながらレジにやってきたのは、これまた某有名子供服ブランドの販売員である船場(せんば)さん。 船場さんはメーカーの人だけど入社7年、うちのデパートに来て5年のベテランさんだ。 ちなみに荒川というのは私の事ね。 「どうしたんですか?船場さん。」 と、わざと大袈裟な心配顔を作る。 「いつも沢山買ってくださる山本様って顧客の事なんだけど、あそこのくそガキが接客している間ずーっと私のお尻にカンチョウするのよ。」 カンチョウって……。 さらに心配顔で話を聞く。 「本当に?それで船場さんどうしたんですか?」 「どうもこうも、何も言えないし出来ないわよ。売り上げに貢献してもらってるし。ひたすら笑顔で耐えたわよ。」 「酷いですねぇ。お尻、大丈夫ですか?今度そのくそガキ来たら私が頭、張り倒してやりましょうか?」 「ありがと、荒川ちゃん。あんた綺麗な顔してそういう事言ってくれるから何だか嬉しくなっちゃう。」 「近頃の親は注意しませんからね。誰かがやらねば。」 とにかく相手の話を否定しない。女社会で上手く生きていく術だ。 「だけど、うちの上顧客だから遠慮するわ。荒川ちゃんに話してスッキリした。さっ、品出ししてこよ。」 と言いながら船場さんはバックヤードにあるストック場へと行ってしまった。
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