言えないから秘密なんでしょ

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平日とか関係なく、8階時計宝飾品売り場はいつでも閑散としている。 早速、修理コーナーへ向かうと、知った顔があった。 私と同期の安達くん。 無表情であまり愛想のない安達くんがどうして接客業をしているのか未だに不思議だ。 私はいつもの笑顔を振り撒きながら 「電池交換お願いします。」 と言った。 「はい、かしこまりました。時計お預かりしてよろしいでしょうか?」 とほぼ棒読みで安達くんが言う。 び、ビックリ。 日頃からお客様にもこのテンションなんだろうか? 一度も同じ売り場で働いた事ないから知らないけど致命的だよ、これ。 それでも私は笑顔を絶やさない。 奥に時計を持っていくと安達くんは直ぐに戻ってきた。 何だ、安達くんが電池交換するんじゃないんだ。 ……………… ………… …………………… に、してもこの沈黙。 何か話した方がいいのかな? でも勤務中だし無理に話さなくても…。 って悩んでいると 「今度、」 「ん?今度?」 「お前も行くの?同期会」 ビックリしたぁ。 まさか、安達くんから話しかけてくるなんて。 多少、動揺したものの直ぐに答える。もちろん、最高の笑顔つきで。 「うん。行くよ。」 「ふうん……。」 えっ! ええぇぇぇぇぇえええええ~っ! なに? 自分から聞いてきた癖に、そのどーでもいいわって返事。 取り敢えず、落ち着け 落ち着くんだ私。 いつもの笑顔を何とか取り戻すと 「安達くん、いつも参加しないよね?今回は行く?」 「ああ、たぶん。」 た、たぶんって…自分から同期会の話題振っといて何?その曖昧な返事。 しかも、もうどっか行っていないし。 って思っていると奥から私の腕時計を持って出てきた。
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