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翌朝、こっそり帰ると言い出した司を引き止め久しぶりに皆で朝ごはんを食べようと誘った。
「でも俺が居たら静香さんが...」
「一緒に居て欲しいの、母さんに...社長と向き合ってもらうために」
「条件か...」
雫が辞める条件の一つとして提示された静香との対面。
それを雫本人の口から母に告げねば。
(母さんの復讐方法は分からない。
けど、この時を逃したら母さんはこれからも過去に向き合わずずっとあの人のこと忘れられなくなってしまう。
私の手で、娘の私が母さんの背を押さなきゃ...)
今までにない強い眼差しで司を見つめ雫は少し微笑んでみせた。
「行こう、俺と雫のこれからのために」
差し伸べられた司の手を握り私は母が居るだろうダイニングに向かった。
「おはよう」
「お、おはようございます」
司と共に中へ入ると母さんの方から挨拶された。
まるで一緒に居ることなどとっくに分かっているかのように驚きもせず箸を口へ進める。
「皆藤、座りなさい。
あなたも久しぶりに志乃さんのごはん頂くのよ」
「あ、はい...」
「母さん...」
目を合わせず告げた母の言葉に私は目を潤ませた。
(司のこと...認めてくれるのね...)
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