この世で一番怖いのは?

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「なんという。いや、しかし好いた男を取られてなるものかという情念の怖さは、それこそ玉鬘の父、夕霧に取り憑いた右大臣で解っていたはずなのに」  これも自らが招いた因縁なのか。光明はさめざめと泣いてしまう。 「すまん。俺が不甲斐ないばかりに」  そんな光明に釣られて連人も泣き出してしまう。平安時代の男は泣いてなんぼ。嘘泣きのためには袖の下に水の入った小瓶まで用意したほどだ。というわけで、二人揃って大泣きである。 「ど、どうしたんだ?」  それに驚いたのは冷泉帝。それはそうだ。内裏のど真ん中で国のツートップがおいおいと泣いていたら、そりゃあ度肝を抜かれる。 「ああ、主上」  この際だからと、かくかくしかじか、こんなことがあって玉鬘は出仕できませんと奏上した。 「ううむ。まさか玉鬘。そんなことに」  で、冷泉帝までもらい泣きだ。大変な事態だ。が、冷静になるのも帝が一番早かった。 「泣いていても仕方ない。玉鬘は俺が貰う」 「え?」 「へ?」  帝のいきなりの宣言に、光明も連人も顔を見合わせる。あの、それってと困惑だ。
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