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 鷹崎真矢(たかさきしんや)の朝は早い。  今日も朝六時半に部室にやってきた。  だがサークル活動をする訳ではない。  コーヒーを飲んだり、本を読んだり、ゲームをしたり。  要するに部室で暇を潰している、という訳だ。  だが、今日は部室に先客が。 「おや」  部室の電灯は点いたままで、ソファーの端から染められた茶色い髪が飛び出している。  鯨尾透哉(くじらおとうや)だ。  近づいてみると透哉は毛布をかけて爆睡している。  大方先日バイトが終わった後、家よりも近い部室に寄り、そのまま寝てしまったのだろう。  週に一度はこのような朝がある。なので真矢は気にも留めず、荷物と上着を置く。  IHヒーターにコーヒーポットを置き、お湯を沸かす。その間に手動ミルで珈琲豆を挽く。  慣れた手つきでマグカップにコーヒーを入れ終わると、椅子に座りコーヒーを飲む。  するとその香りにつられたのか、透哉が目を覚ました。 「なんだ……真矢か」 「おはよう透哉、またバイトが遅くまでだったのか?」 「夜のほうが時給がいいからつい。それより、最近はコーヒーなんだな」  犬のように鼻を利かせ、真矢の飲み物を嗅ぎ当てる。 「バイトで習ったんだ。紅茶ばかりだったけどコーヒーも面白くてね、自習も兼ねて道具を一式買ってみた」 「いつもながら行動が早いねぇ」 「透哉のも入れようか?」 「んじゃあ頼むわ」 「その間にシャワーでも浴びてきたらいい」 「そうするわー」  透哉はタオルを掴むと部室から消えていった。  真矢も新たにお湯を沸かし、コーヒーの準備を始める。
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