3人が本棚に入れています
本棚に追加
朝
鷹崎真矢の朝は早い。
今日も朝六時半に部室にやってきた。
だがサークル活動をする訳ではない。
コーヒーを飲んだり、本を読んだり、ゲームをしたり。
要するに部室で暇を潰している、という訳だ。
だが、今日は部室に先客が。
「おや」
部室の電灯は点いたままで、ソファーの端から染められた茶色い髪が飛び出している。
鯨尾透哉だ。
近づいてみると透哉は毛布をかけて爆睡している。
大方先日バイトが終わった後、家よりも近い部室に寄り、そのまま寝てしまったのだろう。
週に一度はこのような朝がある。なので真矢は気にも留めず、荷物と上着を置く。
IHヒーターにコーヒーポットを置き、お湯を沸かす。その間に手動ミルで珈琲豆を挽く。
慣れた手つきでマグカップにコーヒーを入れ終わると、椅子に座りコーヒーを飲む。
するとその香りにつられたのか、透哉が目を覚ました。
「なんだ……真矢か」
「おはよう透哉、またバイトが遅くまでだったのか?」
「夜のほうが時給がいいからつい。それより、最近はコーヒーなんだな」
犬のように鼻を利かせ、真矢の飲み物を嗅ぎ当てる。
「バイトで習ったんだ。紅茶ばかりだったけどコーヒーも面白くてね、自習も兼ねて道具を一式買ってみた」
「いつもながら行動が早いねぇ」
「透哉のも入れようか?」
「んじゃあ頼むわ」
「その間にシャワーでも浴びてきたらいい」
「そうするわー」
透哉はタオルを掴むと部室から消えていった。
真矢も新たにお湯を沸かし、コーヒーの準備を始める。
最初のコメントを投稿しよう!