第一章 港町の設計士

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柊吾は素材収集を終え転石のあるエリアへと歩いていく。  転石とは、転送魔法を宿した神秘的な石で、各フィールドと拠点の間を行き来できる優れものだ。その絶大な利便性ゆえ、悪用されないよう教会で厳重に管理されており、討伐隊による新エリア開拓時は、神官も同行し転石を設置して拠点とを魔力的に繋ぐ。  廃墟と化した村を歩くたび、視界の隅でアビススライムの姿が見える。全身が灰色半透明の不定形モンスターだ。アメーバと言った方が適当な見た目で、目や口などの部位や知性もない。凶霧発生以降、フィールドに大量発生し、生きた人や魔物の死骸などをその液状の体で丸呑みする。もし不意を突かれて飲み込まれれば、体内の消化液で死体も残らない。炎で焼き尽くすしか倒す方法はなく、基本的に素材は回収できないが、稀に体内で消化しきれなかった高ランク鉱石などのアイテムをドロップすることもある。柊吾はミスリル鉱石を入手するため、このモンスターを狩り続けた。何度も大群に囲まれて死にかけたが、命からがら生き伸び、五年かかってやっと手に入れたのだ。
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