第一章 港町の設計士

10/43
前へ
/979ページ
次へ
「――くそぉっ! よくもオガを!」  レザーアーマーに身を包んだ戦士がロングソードを両手で握り駆け出した。同僚の戦士が今、地に倒れ伏しカオスキメラの獅子の牙を突き立てられている。 「があぁぁぁっ!」 「今助けるぞ!」 「待てクロロ!」  レザーアーマーを装備した若い戦士『クロロ』の前方を走っていた騎士たちが叫び、足を止める。彼ら三人が盾を斜め上に構えると同時に、キメラのヤギの口から青色の火炎ブレスが放射された。 「ぐぅぅぅぅぅ」  放射が止むと同時に、騎士たちの後ろからクロロが飛び出した。向かう先は食われかけている同僚の元。後方で支援していた魔術師たちの魔法攻撃がキメラへ放たれる。  しかし炎の魔法も氷の魔法も獅子の顔やヤギの首に命中するがビクともしない。それもそのはず。凶霧発生以降、魔法への耐性ができたのか魔物たちには魔法攻撃が通らなくなった。 「クロロ、上だ!」  疾走するクロロの頭上に魔物が迫っていた。キメラの尻尾――蛇だ。  クロロは頭上を仰ぎ、躱しきれないと悟った。そのとき―― 「ギィヤァァァァァッ!」  カオスキメラのヤギが突然叫び、のけぞった。クロロの頭上の蛇は頭を切断され、大きく飛んで広場横のテントへ衝突し砂塵を巻き上げる。  騎士や魔術師たちが唖然と立ち尽くす中、男はカオスキメラの目と鼻の先で滞空する。 「――援護します」  足の裏から炎を噴射し、肩に大剣を担いでカオスキメラの眼前で睨みつけているのは柊吾だった。
/979ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1247人が本棚に入れています
本棚に追加