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柊吾はむぅと唸る。すると、周囲を駆けまわっていた男の一人が近くまで歩み寄って来た。柊吾は男へ目を向ける。
(なん、だ? その恰好……)
男の恰好を見た柊吾は目を丸くした。人の良さそうな顔立ちの細身の男は、柊吾のよくやるハンティングゲームの序盤で見るような、茶色のレザーアーマーで全身を包み、腰に西洋風の剣を下げていた。
「良かった! 目を覚ましたのか君!」
彼は安堵するように頬を緩めると、柊吾の横に膝を落とす。仰向けに寝ていた柊吾は、顔を男へと向け口を開くが言葉が出ない。
「……ぁ……っ……」
「無理はするなよ。君は近くの廃墟で魔物に襲われていたんだ。もうすぐ神官が来て治癒魔法をかけてくれるから、今は安静にしていなさい」
『魔物』、『魔術師』、『治癒魔法』、そして男の恰好。ようやく柊吾は一つの仮説を導き出すことができた。
(……異世界?)
その可能性に思い至ったとき、柊吾の右頬が吊り上がった。嬉しかったのだ。重度のゲーマーである自分が異世界に来るなど胸が躍る。今までゲームでどんなクエストをクリアしようとも、ここまで歓喜したことはない。
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