序章 絶望の異世界スタート

2/3
前へ
/979ページ
次へ
 柊吾はむぅと唸る。すると、周囲を駆けまわっていた男の一人が近くまで歩み寄って来た。柊吾は男へ目を向ける。 (なん、だ? その恰好……)  男の恰好を見た柊吾は目を丸くした。人の良さそうな顔立ちの細身の男は、柊吾のよくやるハンティングゲームの序盤で見るような、茶色のレザーアーマーで全身を包み、腰に西洋風の剣を下げていた。 「良かった! 目を覚ましたのか君!」  彼は安堵するように頬を緩めると、柊吾の横に膝を落とす。仰向けに寝ていた柊吾は、顔を男へと向け口を開くが言葉が出ない。 「……ぁ……っ……」 「無理はするなよ。君は近くの廃墟で魔物に襲われていたんだ。もうすぐ神官が来て治癒魔法をかけてくれるから、今は安静にしていなさい」  『魔物』、『魔術師』、『治癒魔法』、そして男の恰好。ようやく柊吾は一つの仮説を導き出すことができた。 (……異世界?)  その可能性に思い至ったとき、柊吾の右頬が吊り上がった。嬉しかったのだ。重度のゲーマーである自分が異世界に来るなど胸が躍る。今までゲームでどんなクエストをクリアしようとも、ここまで歓喜したことはない。
/979ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1247人が本棚に入れています
本棚に追加