第一章 港町の設計士

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第一章 港町の設計士

 この世界は死に瀕している。  数年前、突如として『凶霧(イビルミスト)』と呼ばれる謎の霧が地上に蔓延し、あらゆる生物を飲み込んでいった。まず人間とそれに近い種族たちは多くが病に倒れたものの、なんとか生き延びた。しかし魔物たちは正気を失い凶暴化し、中には突然変異するものまでいた。その後、凶暴化した魔物たちによって、穏やかだった世界は瞬く間に阿鼻叫喚の地獄と化したのだ。なんとか生き残った種族たちは、小さな拠点で身を寄せ魔物を狩りながら、毎日を細々と生きている――  両腕と両足を失った柊吾は、孤児院のシスター『マーヤ』の伝手(つて)で鍛冶屋に義手、義足を作ってもらうことで、かろうじて最低限の生活ができるようになった。とはいえ、科学の発展していないこの世界の技術だ。義手義足の性能に期待してはいけない。  それから柊吾は、孤児院で様々なことを学んだ。この世界のこと、他種族のこと、魔法のことなど様々。教会にはあらゆる書物が保管されており、柊吾は一心不乱に読み漁った。  
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