奈良日記3

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『大和は国のまほろば』 「まほろば」とは、素晴らしい場所、住みやすい場所という意味で、倭健命(ヤマトタケル)が望郷の念を込めて読んだ歌の冒頭です。彼は戦いに赴き、病を得て現在の三重県で亡くなりました。 『大和は国の真秀(まほ)ろば 畳(たた)なづく青垣、山籠れる 大和うるわし』 意味は「大和は国の中で一番素晴らしい場所です。幾重にも重なりあった青い垣根のような山々、その山々に囲まれた大和は本当に美しい場所です」というもの。 奈良に来て感じたことは、「空が広い」。 「興福寺」の中央にある「中金堂」は朱塗りの美しい建物で、2018年に再建されました。 別料金が必要なせいか、他に観光客もおらず、敷地内には私一人でした。 建物前面の広い敷地には芝生が敷かれ、それを囲むように石の回廊が配されています。 その真ん中に一人ぽつんと立ったとき、思わず心のなかで呟きました。 『大和は国のまほろば』 右手には五重塔、振り返れば、青垣のように連なる山々………… 1300年前の人々も同じ風景を見ていたのだろうか? そう思ったら「今」ここにいる自分も、延々と続いて来た、そしてこれからも続いてゆく時間の一瞬に在るんだと。 それは不思議な感覚でした。 飛鳥時代、奈良時代、政治の中心であった奈良には寺社仏閣は勿論、遺跡や古墳、そしてまだ発掘途中の遺跡が多くあります。 よい意味で「田舎」というか、観光地され尽くされてないというか、高い建物がない。色々なお寺を巡りましたが、その何処に行っても、空を遮るものが少なく、遠くに連なる山々が見えるのです。 時間の流れがゆっくりで、人がとても優しい。(少なくとも、私が接した人達は皆、観光客の外国の方さえも親切でした) ゆっくりと呼吸をして、空を見て、好きなものに触れる。 疲れた心には、そんな時間が必要なのだなぁと思います。
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