遠い国の話か

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四月に入ってすぐ、三年ぶりのお花見に行きました。 混雑を避けるため九時すぎのバスに乗り、お茶とコーヒーのポットを手にちょっと贅沢なお弁当を買って現地に着いたのは十時前でした。 時間も早いため人も疎ら。少し奥まった、桜に囲まれた場所にレジャーシートを敷き、お弁当を広げました。 ここ二年、歩いて見るだけだった桜は満開の時期を過ぎていましたが、天気もよく暖かで、時折吹く風に雪のように散る花びらは何とも言えず美しかったです。お陰でお弁当の上にも、紙コップの中にも桜の花びらが。 そこで二時間ほど過ごしたのですが、帰る頃には自分達も、シートの上も、靴の中まで桜の花びらだらけでした。まあ、それも風情があります。 久しぶりに外でマスクをつけずに過ごしたのですが(飲食の間はマスクを外してもよかったので)、快適でした。コロナ前はこれが当たり前だったよな~と思うと、ちょっと切ないです。 ロシアがウクライナ侵攻を仄めかしたのは、北京オリンピックの真っ只中でした。 物騒な話だと思いつつも、この時はこんな大規模な戦争になるとは全く、想像もしていませんでした。 2000年代に入ってからも世界のどこかで内戦や紛争は起こっているし、特に民族や宗教に絡む問題は歴史的にも心情的にも複雑で根深く、互いに譲れないものがあるのだろうと感じます。 ウクライナの歴史は複雑です。 かつて「キエフ大公国」という強国がありました。モンゴル帝国の侵攻により領土は崩壊、様々な国により支配、分割されます。 18世紀に領土はロシア帝国とポーランドに分割されますが、「ロシア革命」後に民族自決運動が起こり、1917年に「ウクライナ人民共和国」を宣言。第二次世界対戦後はソビエト連邦の一部となり、1991年のソビエト連邦崩壊に伴い、ウクライナは独立を果たします。 独立後も情勢は不安定で、国内では親ロシア派と親欧米派が対立を続けてきました。 ソビエト連邦を構成していたのは現在のロシア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバ、ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン、 カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタン、エストニア、ラトビア、リトアニアです。 面積の殆どをロシアが占めていて、その他の国々はロシアの西側の国境線をなぞる形で位置しています。 ウクライナはロシアと東欧に挟まれており、互いの緩衝地帯でもあります。ロシアは西側の軍事同盟であるNATOを脅威と感じていて、ウクライナが取り込まれることを恐れています。 ウクライナの中にロシア回帰を望む人々がいるのも事実で、ロシアに近い東部ではその傾向が強い。ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク州の一部は親ロシア派が実効支配しており、ロシアがこれを支援していたとされます(ロシアは否定していましたが)。 この親ロシア派のロシア系住民の保護を名目に、今回の侵攻ははじまりました。 ソビエト連邦は一党独裁の社会主義国家で、「店舗は全て国営、全員が公務員」という、今では信じられないような国でした。 国民全員で利益を公平に分けあう、「格差」を生まないという利点は、「向上心の欠如」というマイナス面もありました。 1990年1月、モスクワにオープンした「マクドナルド一号店」に、市民は衝撃を受けます。 「ハンバーガー」という新しい食文化に、そして笑顔での丁寧な接客に。 ソ連時代の人々は、笑みもなく粗野で素っ気ないサービスに慣れてしまっていたので、逆に居心地悪く感じてしまい、マクドナルド側が笑顔を控えめにするよう言ったそう。 初日の来店客は3万人を超え、その後もしばらくは長い行列が絶えなかったといいます。 とは言え、この頃ロシアは慢性的な物不足が続いていました。食料や日用品を手に入れるために数時間並ぶのは当たり前、生産ラインは需要と供給がめちゃくちゃで、「顧客のニーズ」を考慮しない(しなくてもいい)国営のならではの弊害なのでしょう。 ソ連崩壊の前、人々は自由と民主主義に期待し、自分達の生活がよくなることを疑いませんでした。確かに市場は解放され、海外から流れ込む品々で、物不足は解消されます。けれども今度はひどいインフラが起こり、1年で物価が25倍に、預金の価値は25分の1になってしまいます。 ゾッとしますね………… 「ソ連時代のほうがよかった」と、民主主義を後悔する人々も多かったといいます。 今回の侵攻では、両国で多くの犠牲が出ています。 どちらにも言い分があり、戦う理由がある。 「侵攻したロシアに非があるのだ」と、ニュースを見ながら私も思っていました。ただ、ロシア国内で認識されている事実は私達の知るものとはずい分と違うようです。 子供や、女性や、老人などの守られるべき人々が犠牲になっている現状、美しかった街は瓦礫と化し、家も破壊され、身一つで逃げ出すしかない。どんなに辛く、悲しく、恐ろしかったでしょう。ロシア兵による非道な行為も報じられています。本当だとすれば、絶対に赦されざる行為であるし、ロシアという国を含めて処罰し、償わせるべきだと強く思います。 多くの犠牲を払いながら、ウクライナは戦い続けています。 そして、ロシアは軍をひく気はないようです。 海で隔てられてはいるけれど、ロシアと日本は隣国なんですよね。ウクライナ侵攻は決して「他人事」ではなく、日本が考えなくてはいけない問題で、危機感を感じるべきものだと思います。 「遠い国の話」ではなく「自国」のこととして。
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