木蓮

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昔、駅に向かうバスの車窓に、白木蓮の街路樹が植えられた道が見えました。 春が近づく頃に咲く、この花を見るのを密かに楽しみにしていたのですが、いつの間にかなくなってしまいました。 白木蓮は中国原産で、3月~4月に花を咲かせます。樹の高さは5~15m、花弁は肉厚で、上を向いて咲きます。 蘭に似ているため、「白木蘭」とも呼ばれていました。 「木蘭」といえば、「花木蘭」をおもいだします。 病弱な父の代わりに、男を装い軍に入り、手柄を立てたという伝説の女性。皇帝からの褒美を断り、故郷に帰る事を願い出て家族と再会したとされます。 ディズニーアニメの「ムーラン」で有名になりましたね。 「花木蘭」の名は、「木蘭辞」という300字余りの短い詩の中に出てきます。 読み人知らずの古い漢詩は、その後様々に脚色され、物語として伝わってきました。 「花木蘭」が実在したか否かは不明ですが、過酷な運命にめげず、自身で運命を切り開く姿は格好よく、痛快です。 私は、田中芳樹さんの「風よ、万里を翔けよ」という小説でこの物語を知りました。 物語の最後、共に戦場で戦ってきた親友が女性に戻った木蘭を見て、「おれは天下に比類のない痴者(おろかもの)だ。これほどの佳人と九年もいっしょにいて、それと気づかなかったとは」と呟き、彼女に手を引かれ、木蘭の樹の下に立つ家に向かう場面がとても印象に残っています。 白木蓮の花言葉は、「高潔な心」「気高さ」など。天を向いて咲く凛とした姿にぴったりの花言葉ですね。 木蓮は「地球上で最古の花木」とも言われ、一億年前から今の姿であったそう。 開花時には葉をつけず、伸びた枝に花だけをつける姿が不思議だったのですが、そう思って見ると「原始的な植物なのかなぁ」と思ったりもします。
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