第1話

3/5
前へ
/120ページ
次へ
「あぁ、どうぞどうぞ、見ていって下さい」 慌ててそう応えたものの、どこをどう見学させればいいんだ?  ここにはお前に似合うようなものは、何一つないぞ。 ほのかに薬品の臭いが漂う部屋に、読者モデルのような清潔感漂う、正攻法のイケメン高校生が立っている。 お前が見に行くべき場所は、ここじゃないだろう。 身長180㎝は越えているであろう侵入者の彼は、ぐるりと辺りを見渡した。 「普通の理科室で、活動をされてるんですね」 「あぁ、まあ。そうですけど」 山崎が「新入生ですか?」と聞いたら、彼は「はい」と答えた。 俺は部長として、活動のアピールと案内をしなければならないところだが、しまった、そこまで考えてなかった。 「今日は新歓だから、いつもならもっと色々やってんだけどな」 「エロゲーとか、格闘ゲームな」 「なにせ部員の確保に苦労してるから、仲間がほしくって」 「オンラインで繋がるから必要ねーとか言ってただろ」 「この電子制御部の部長として、やれることはなんでもやっていくつもりなんだけどね」 「部長決めじゃんけんで負けて、ごねてたくせに」 俺は山崎を振り返った。 この男は、新入生を勧誘しなければならないという大事な時に、余計なコトばかり言って足を引っ張る。 何にも分かってない。 「じゃんけんで負けて、3回勝負から5回勝負にかえて、2回やっても負けて、泣く泣く部長になったくせに」 この場の空気をちゃんと読めよ!  俺が言い返そうとした時、その1年の彼は、俺たちを仲裁するかのように割って入った。 「今は、部員はお二人だけなんですか?」 その大人びた風な対応に、ちょっとイラっとする。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加