第18話

2/6
前へ
/120ページ
次へ
気がつけば、俺はただテーブルの上に置いた球を発射するだけの遊びに、夢中になっていた。 完全下校30分前のチャイムに、ようやく時間の経過を知る。 やべ、早く片付けて、帰らなくっちゃ。 発射スイッチを入れるタイミングの切り替え、もしくはシリンダーの動きを調整する方法を考えないとな。 ただ単に電池につないだだけのシリンダーは、単純なピストン運動を無制限にくり返していた。 空中を飛ばすのと、机の上を滑らすのとでは違うだろうけど、出力だけは予想通りだ。 そこまで考えておいてから、ため息をついて立ち上がる。 床に散乱した球を拾って片付けると、シリンダーを棚に戻して鍵をかけた。 そういえば山崎のやつ、本当に今日も来なかったな。 別に一人でやることが嫌なわけじゃないし、嫌いじゃない。 だけど、俺のことを一番に理解し、いつも一緒にいてくれるものだと思っていた親友が、こんなにもあっさりと離れていくとは、思いもしなかった。 今の山崎が、俺のことをどう思っているのかは分からない。 だけど、俺の中では、山崎は山崎のままだった。 朝の教室、山崎はいつもと変わらない。 挨拶をすれば、普通に挨拶を返す。 だけど、そのまま素通りして、すぐに別の奴らのところへ行く。 そのことに、なにか問題があるわけじゃない。 これまでにだって、そんな時はあった。 部活のこととか、マシン制作のこととか、そんな問題がこの世に全く存在していないかのような顔をして、普通に接してくる。 だけどそのことを俺もあいつも、あえて口に出して言わないのは、お互いにどこかで避けているからだ。 「じゃあな、おつかれー」 放課後の開始と共に、山崎は飛び出ていく。 行き先は決まっている。 1年の拠点にしている、体育館倉庫だ。 あいつは自分より下の人間を作って、そこでふんぞり返って偉そうにしているのが、好きな奴だったんだな。 迷惑な男だ。 そんな一面があったなんて、初めて知ったよ。 俺はあんなことでケンカしたなんて思ってないのに、山崎にとっては、そうじゃないみたいだ。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加