123人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
私の幼馴染み
いつも見慣れている山の連なり。
その一点に太陽がゆっくりと沈もうとしていた。
黒緑色した山の稜線だけが金色に輝き、群青の空に鬱金と橙の雲が浮く。
銀鼠の川はそれらの色を吸収して煌めいて、辺りは少しずつ夕闇へと近づいていく。
私はその景色から、目を前へと移す。
先程からずっと黙ったままの幼馴染みが止まる様子もなく前を歩き進めていた。
茜さす彼のTシャツを黙って追う。
そりゃあ、落ち込むのは分かる。
小学生の時から続けていたサッカー。
毎日真っ暗になってもボールを追い掛けていた。
あれだけ頑張っていたのに。
高校最後の試合では、彼の蹴ったボールが相手チームに渡り、そのせいで負けてしまったのだ。
皆が皆、努力の全てが報われるわけではない。
それは分かっているけれど、あまりにも切ない。
何と声を掛ければ、彼の気落ちが和らぐだろうか。
掛ける言葉が見つからず、未だ私も黙ったまま彼の後を歩いていた。
最初のコメントを投稿しよう!