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そしてそのちょうど1か月後、青年の元に一通の封書が届く。
彼はそれを開いてまずは落胆し、その後すぐに怒りに体を震わせる。
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この度はご応募ありがとうございました。
ここに選考の結果をお知らせいたします。
第一次選考 落選
なお審査員による選評をお付けしておりますので参考になさってください。
<選評>
物語全体にまとまりがなく、世界観や設定などについても理解し難い部分が多い。
スケールの大きなストーリーにもかかわらず登場人物が少ない。各人物に個性を持たせようとしすぎるあまり、無意味とも思える特徴を加えるのはテンポを損ねてしまう。
誤字脱字や文法の間違いはないものの、場面のつなぎ方や情景の描写については練りこみの甘さが見られる。
まずは名著に目を通し、文筆の基礎から学んだほうがよいと思われる。
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通知を何度も読み返した青年は自分が何を考え、どう思っているのかが分からなくなっていた。
同封されていた資料には受賞者の名が掲載されていたが、大半が人間のものではなかった。
心血を注いだ大作でさえあっさりと落とされる。
しかしこの惨憺たる結果は逆に彼の闘志に火をつけた。
「今回は負けだ。でも次はそうはいかないぞ。今度こそ、今度こそあいつらを下してやる」
青年はすぐに次回開催のコンクールの日程を確認し、引き出しから原稿用紙を取り出した。
そして勝ち目のない戦いに勝つために鉛筆を滑らせる。
アイデアはいくらでも湧いてくる。
しかも彼は疲れというものを知らない。
目的を達成するまではがむしゃらにそれに取り組み続けるのだ。
「よし、やるぞ!」
青年の頭部に搭載されている旧式の演算装置が稼働を始めた。
終
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