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バンドというものには色々なジャンルが存在する。青春パンク、オルタナティブ、シューゲイザー、USロック、UKロック、その他諸々エトセトラ。 その中でも一際異彩を放っているジャンルが、俺のいる界隈なのではないかと思う。 「ルイ様ー!!」 「ジンー!!愛してるー!!」 黒を基調とした衣装に派手なメイク。 黄色い声援が飛び交い、幾重にも重なる。 重低音の効いたサウンドの中、エッジの効いたギターが歌うように前に出て行くと、フロアからステージへ沢山の腕が伸びてくる。 甘いマスクに負けない艶やかな歌声が聞こえれば、いよいよフロアの観客達は夢でも見ているかのようにうっとりとした表情になる。 その光景はまるで神と信者のようだった。 『ヴィジュアル系』 アイドルとも違うが、偶像崇拝という観点においては似ている存在なのかもしれない。 そんな煌びやかな世界に俺は生きている。 「さあ、今夜も楽しい夜のはじまりだ」 会場の熱気は頂点に達した。
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