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3
2マンライブを翌日に控えたリハーサル。
いつものスタジオで俺は瑠衣と顔を合わせた。
前回の一件があったから泰正がどことなく心配そうな顔をしてソワソワしている。
しかしそれも、最初の一音が鳴った瞬間に変わった。
瑠衣がハッと顔を上げ、俺の方を見る。
一瞬目が合って、すぐにまた前を見据えた。
2時間の合わせはあっと言う間に終わった。
ミーティングに向かう前の僅かな時間。
仁は着替えに行き、泰正は次の予約を入れに受付に向かった。
二人残された待合スペースで瑠衣は言った。
「出来んじゃん。」
俺は煙草を一本取り出してニヤリとした。
「やれば出来る男だから、俺。」
「なら最初からやれよバーカ。」
悪態を吐く横顔はどこか嬉しそうだった。
「じゃあ瑠衣さんはバンド残留ですか?」
「現状はな。でもお前がまたつまんねぇ演奏しやがったらその時は辞めてやるから覚悟しろ。」
泰正と仁が一緒に戻ってきた。
俺達は今度は四人揃ってスタジオを後にした。
久しぶりに和やかな空気の中でスタジオの扉を閉じた気がした。
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