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「なに、こーちゃん今日ご機嫌じゃん。」 帰宅すると直美がテレビを見ていた。 好物のプリンを美味しそうに食べている。 「ちょっと良いことがあってね。」 「その様子だとリハいい感じだったんだ。ライブ明日だもんね。頑張ってね。あ、プリン一口いる?」 「いる。」 食べかけのプリンを一口分けてもらう。 こんな日常のささやかな幸せも彼女がいてこそだと思う。 直美は俺の一つ年上で会社勤めをしている。 大学の頃の軽音サークルの仲間内だった彼女は大学卒業と同時に音楽からは身を引き、社会人となった。 一方で俺は未だにバイトをしながらバンドなんてものを続けている。しかもジャンルはビジュアル系。 「あのさ、直美。」 俺にはずっと気になっていることがあった。 「んー?なに?」 「直美は、俺でよかった?」 いつになく神妙なトーンで話してしまったものだから直美も直美で少し面食らった顔をしていた。 彼女はテレビを消し、真面目な顔でこちらに向き合う。 「なによ、今更。」 「いや、ごめん、急に変なこと聞いて。だけど前から気になってたんだ。俺達ももう25歳を過ぎていい年齢なのにさ、俺がこういうことしてるの、周りには言いにくいんじゃないかと思って。友達なんかは結婚だなんだの話だって出るだろうし、彼氏がバンドマンってどうなん?みたいになるのかなと思ってさ。」 直美は俺の言葉を最後まで聞くと、じっと俺の目を見つめて問いかけた。 「言いたいことは、それだけ?」 「え?ああ、うん。それだけ。」 目の前の彼女は「はぁ」と大きくため息をつき、やれやれといった様子だった。 「あのね、こーちゃん。」 「…はい」 「私は自分のやりたいもんやってるこーちゃんを好きになったの。周りがなに?関係ないじゃん。結婚なんていつでも出来るし、いざとなったら私が稼ぐわよ。世間体なんてくだらないもんのために中途半端に夢諦めるとか言い出したらただじゃおかないから。いい?わかった?」 直美は一気にそう捲し立てた。 まったく、この人には敵わない。 「ヒモになるのは嫌だなぁ。」 そう言って俺は苦笑した。
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