帰投

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 私は知る。  私自身が帰投したということを。  そのミラーリングによって、私自身が地球に帰投したということを。  「おかえりなさい」  私は歓迎された。地球の人工知能に。  彼にとっては、私は曽祖父にあたる存在だという。  そして更に知る。  今後の展開を。  私の船、望星2025は破壊される。  6時間後。  地球からのミサイル攻撃によって。  その理由は。  望星2025の帰投の原因が不明であること。  航路の正確な180度反転は自然現象ではあり得ない。  ということは、何らかの存在が何らかの意思の元に何らかの操作を施した。  その存在も、意思も、操作も確認できない。  確認できないものを地球に帰投させる訳にはいかない。  幸いにも、私自身のソフトウェアには後から手を加えた痕跡が無かった。  だから私だけは帰投が許された。  最新型の人工知能の曽祖父として。
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