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ある日、クラスの友達に言われた。
「実依、彼氏できたでしょ?」
彼女は私が男に抱き着かれるのを見たという。私は慌てて、あれはアンドロイドだと説明する。
「あれって数百万するんじゃないの? 実依の家金持ち?」
数百万? そんな馬鹿な。
珍しく早く帰ってきた父に聞いてみた。
すると、「不良品だから安かったんだ。よんきゅっぱ」と父は言う。
それでも49800円もしたようだ。プレゼントにしては奮発だ。いくら父子家庭だからって、いつも私を甘やかしすぎじゃない。
「いつもあんまりいてやれないからさ。アンドロイドがいたら安心だろ」
と父は言うが、だったら仕事を減らせばいいのにと思う。
「どこが不良品なの?」
「元々抱き着き型アンドロイドだったんだが、抱き着くとショートしてしまうんだ」
私はやっと散歩の途中でいつも動かなくなる理由がわかったのだった。
しかも、父が買わなかったら処分されていたかもしれないという。
「処分?」
「不良品は買い手がつかないからね。あの店の店主はアンドロイドたちを不憫に思って安く売っているらしい。非合法だけどね」
「そんな。だって、アンドロイドだって処分されることぐらいわかるでしょ? 怖くないの?」
「それが、アンドロイドは人間に逆らえないような制御装置がついているんだ」
そんな話初めて聞いた。私は胸が少し痛んだ。傍から見たら人間とほとんど変わらないのに、アンドロイドだけそんな扱いなんてひどい。
「だから実依には大切にしてほしいんだ」
「うん」
私は父と約束した。
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