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アンドロイドって?
いつもの散歩の途中、イケメンの男性が私に抱きついてきた。わけじゃなく、倒れこんできたのだ。電池切れだ。
いつものことで、私が代わりに持ちあげて家に連れて帰る。彼の体は驚くほどに軽い。重力を調節できる装置がついているためだ。
家に帰り、充電をするとまた彼は動き出した。
「ご主人様。何か用ですか?」
「洗い物して」
「はい」
洗い物が大嫌いの私は、父に頼んで家事用のアンドロイドを買ってもらった。
でも、そのアンドロイドは家事以外にも何でもやろうとする。
たとえば私がお風呂に入ろうとすると、「お背中お流しします」と風呂場についてくる。
断ってもあきらめずに一緒に風呂に入ろうとする。このアンドロイドは防水だが、だからといって男に免疫のない私はいくらアンドロイドとわかっていても裸を共にすることなどできない。
「恥ずかしいから、見られたくないの」
と言っても、わかってくれない。
「男でしょ」と言っても、「私に性別はありません。人間の男に似せて作られてはいますが」と言う始末。
「だから、普通女は男に見られたくないものなのよ」
それで通じたかはわからないが、アンドロイドは風呂に一緒に入るのだけはやめてくれた。
トイレ掃除をするために私が入ってるのに入ってきたこともあった。私は叫んで追い出し、次から鍵をかけて入るようになった。
一つ一つこの家でのルールを教えなきゃいけないのが面倒だ。
もう一つ不満があるとしたら、宿題だけは手伝ってくれないこと。宿題は自分でやるものだと私の父に言われたとか。
私だってほとんどはやるけど、三角関数の加法定理だけはどうしても苦手で、覚えられない。公式と名の付くものが嫌いだ。
彼は簡単に覚えられますと言うけれど、記憶容量が限られている人間と一緒にしないでほしい。
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